見せ物小屋

 夜、博多の放生会に行ったときのこと。見せ物小屋がありまして、そこの客寄せがすばらしく組織だっていたのでメモを。
 まず登場人物の紹介。70近くの男性4名と同じぐらいのおばあさん一人、ならびに30前後の男女各一名、そして20代のおにいちゃんが二人。夜店三つ分ぐらいのスペースで作った小屋が舞台。
 人魚やわけの分からない生き物のおどろおどろしい絵が描かれた看板が上に掛けられ、幕を垂らした入り口のところで、一人のおじいさんがやたらしゃべりまくっている。その周囲には人だかりができているのね。
で、なにしゃべってるのかなぁと近づくと、壁のところに小さな小窓がある。日本髪を結い、おしろいを塗り背中をはだけた女性の後ろ姿が窓の近くにじっとしているのが見え、その先にはその女性とは違う方向をこれまたじっと見つめる大勢の観客が見える。


 で、「お代は帰りで結構」と違うおじいさんが口上を語り、ブザーとともに入り口の幕が開かれるのね。さきほどのおじいさんがなに話ししているのか、じっくりと聞くヒマもなく、なんだか興味が惹かれて大勢の人たちと一緒になかになだれ込んでしまって。
 出し物は30前後の男女二人が立つ左に位置する舞台と真ん中のイスに座ったおばあさんと右の先ほど見えていたおしろいの女性の三つで成り立っていた。
 なにをやってたか、あまり詳しくメモすると営業妨害にもなるかもしれないので止めるけど、ひとつだけ。
 先ほど見えていたおしろいの女性。四角い木の枠のなかに座り、天井からぶら下がった赤い日本の紐をぶらんこにすがるような格好でじっと握っていたのね。それも女性でなくどっからどう見てもおじいさんがおしろい付けてるの。
 枠の前には板が二枚立てかけられそれぞれ「究学の理」と「隠身の法」と書いてある。
 なにか姿が消えるようなことでも起こるのかと期待していても、ただただじっとしているだけ。で、近づこうとすると別の二人のおじいさんが恐い顔して手で「シッシッ」とあっち行けをするのね。
 で、舞台の二人やおばあさんが順を追ってなんだかんだやってると、またブザーが鳴って人が入ってくる。仕方なくトコロテン式に押し出されて、出口のところでこわもてのおにいちゃんからお金を徴収されるわけ。
 入り口のおじいさんはなかの声を隠すために大声でしゃべり続けていたわけね。おしろいのおじいさんは、不思議な雰囲気を醸し出すために座っておられたようでして。もちろん舞台の二人とおばあさんは、それなりのショーをされたわけだけど、人の興味を引きつけるため、それぞれがきっちり仕事をされてるんだなぁと実感した次第でして。
 もちろん文句なんぞいったらおにいちゃんから襟首捕まれて叱られるにきまってる。
「ここは見せ物小屋じゃなくて、にせもの小屋なんだよ」ってね。

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