単純なオス


 クジャクでなくてよかったと思う。あのオスのように飾り立てた大きな羽でクリニックを闊歩すれば、毎日がリオのカーニバルだ。ただでさえ少ない患者の足もますます遠ざかるに違いなく、いくら単純な頭でもそれくらいは想像できる。
 でもよく考えると不思議なことだ。大きな借金はあっても、なぜオスである院長にはあのような大きな羽はないのか。
 もちろん本物の羽のことをいっているのではない。問題は、なぜクジャクのメスとオスのように、男性と女性には大きく異なる特徴がないのか、ということだ。


ダーウィンはオスの進化のスピードがメスより早いからではないかと考えていたが、推論の域を出ることはなかった。
 今回、フロリダ大学の研究者がショウジョウバエを使ってそれを明らかにしたという。
 やや複雑な内容の記事でそれを簡単に紹介しようとあれこれ考えていたが、説明できるぐらいの複雑さだと思った内容が理解できないほどの複雑さだと気づいたので、メモできないことが判明した。
 ということで結論だけ享受したい。
 オスの進化のスピードが早いのは、オスの遺伝子が単純だからだ、だという。せめてどう単純なのか、ぐらいはメモしておきたいのだが、これもなかなかメモするのがむずかしい。最後に少しそれについて説明を加えておくが、とにかく単純なのだ。
 そうした遺伝子を持つオスは、その変化がすぐ表現されてしまう。その変化が生きていく上でうまく働くと個体は生き延びていくが、そうでない個体は消え去るしかない。
 
 一方メスの遺伝子はオスのものに比べ複雑で、それは少々の遺伝的な変化があってもそれが身体に表現されることはあまりなく、結局メスに比べオスの進化のスピードが上がっている、ということらしい。
 そこまではなんとなく理解できたが、それにしてもこの話は人には当てはまらないのではないだろうか。
 
 カミさんがその反証だ。
 もちろんメスであるカミさんはオスの院長より複雑な遺伝子を持っていることに変わりない。だがそれにも関わらず、大きな羽を身につけているのだ。クジャクのオスと同様、異性を引きつける美貌という大きな羽を。
 カミさんが歩けば周囲はたちまちのうちにリオのカーニバルだ。
 
 今日の話題を手がけたときから、メモしたかったことにようやくたどり着いたような気がする。
 さっそくこのメモをカミさんに見せよう。喜びうかれるカミさんの姿が目に浮かぶ。これで明日のビールが倍増されることは確約されたも同然だ。
 …ってなぐらいオスの遺伝子は単純なのだ。

 うーん、いつも以上にまとまらないメモになってしまった。
 実際のところオスの単純性は、メスの性染色体がXXであるのに対し、オスはXがひとつしかないXYという点にある、ということらしいが、それ以上のメモはもう無理。
ネタ元
Despite Flash, Males are Simple Creatures

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