あくび

あくびはチンパンジーの間でも移るらしい。ヒトではあくびのビデオを見せると、およそ50%ぐらいがあくびをするそうな。
 実験はこう。6頭の成人チンパンジーと3頭の子供チンパンジーに、あくびか歯を見せるように口を開けているビデオを見せた。すると2頭の成人チンパンジーではあくびの回数が増えた。チビたちにはあくびは移らなかったけど、ヒトの場合も2才までは移らないという。


 この伝染の仕方は率にすると約3割。少ないようだけど、でもチンパンジーは実験の目的を分からず、ヒトに比較すると十分同等な割合だという。こうした実験は、チンパンジーが、自分や他人の心を理解することのできる証拠となるらしい。
 チンパンジーのことは分かった。問題は人の場合だ。あくびが半数に伝染していたとは正直、驚きだ。看護学校の教壇に立つ身としては、これは聞き捨てならぬ。
 ゴキブリを見つけたら、30匹いるんじゃなく、60匹いるんだよといわれるようなもの。一人があくびしているのを見たら、そのうちクラスの半数はあくびをし始めるのだ。
 そもそも教壇に立つものがいくらベッカム似でも、ベッカムじゃないからといって、あくびするのは失礼だろう。
 一体毎回の講義の準備に、どれだけの時間を費やしているのか、生徒諸君は知ってるのか。少なくとも缶ビール一本を空けるぐらいの時間を使っているのを君たちは知っているのか。
 とはいっても缶ビール一本を空ける時間は、いらぬ噂が立ちかねないので間違っても教えられない。
 午後一番の授業だ。たしかに教壇に立つ院長がまっさきに、眠いことを宣言することがある。それはあくまで、君たちの注意を引くために語っていることなのだ。院長のまねをして、眠くなる必要などない。あくびなどする必要はない。
 ついでに、”人のあくびを見てあくびをする”ことの意味を考えてほしい。つまりは教壇じゃなく、隣の人のあくびを見ていたということの意味を。いくら講義の声が聞き難く、黒板の字が読みにくく、話が分かりづらいといっても、そんな失礼なことをしてはいけない。
 もう一度いう。院長がいくら眠そうな顔をしていてもまねをする必要はない。
 まねをするんだったら、院長の青春時代をまねてくれ。授業のとき眠くなったら、自分の顔をつねったり、鉛筆でモモをついたり、あるいは自分の腕を噛んだりして必死で意識を保とうとしていた純粋な心だった時代を。
 それでもだめなときは、人にあくびなど見られることなく、すぐ寝入ってしまっていた輝かしい青春時代を。

ほんと、眠たくなったときってどうしようもなく眠い。寝るしかないよね。

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