院長の目の前には絶望が広がり、人の目の前には角膜がある。健康な人の角膜は透明だ。でないと光が通らなくなる。当たり前のことだが、この事実は重大なことを意味する。つまり角膜には血管がないのだ。
長い間研究者たちはその理由を追い求めていた。そしてついにそれが解明されたという記事があった。
心の目が曇っているせいか気づかなかった。なるほど、いわれてみれば血管がないのは確かに不思議だ。ということで早速目を通してみたのだが、頭に行っている血管がないのか理解しずらく、かくかくしかじかと簡単には説明できそうもない。
だが絶望をまた一つ抱え込むのもシャクだ。なんとかメモしてみようと思う。
まず知ってもらいたいことがある。血管というのはときどき作られているのだ。ケガをしたときやバイ菌が身体のなかに入ったときその部位にいろんなものを送り込む必要があるからだ。
その血管の成長を促すものに血管成長因子というものがある。このネーミングはぜんざいに白玉を入れれば白玉ぜんざいになるのと同じ理屈だ。
この血管成長因子にA,C,Dがある。正常の角膜表面の上皮にはVEGFR3という物質があり、それがこのCとDをくっつけてしまうことが分かった。そのためCとDが働けなくなり血管ができないというのだ。
試しにこんな動物実験がやられた。
上皮を置いた角膜と置かない角膜を比較すると、置かない方で血管ができた。その角膜にVEGFR3を加えると血管ができなくなったという。
少し長くなったがこれでもう十分だろう。メモしている本人も分かっていないということがすっかりご理解頂けたはずだ。
メモするには不適当な話題だったかもしれないと反省している。
とはいえ血管成長因子がCとDではなくCとGだったら、もう少し端的にメモできたような気がする。
スタッフ「どういうこと?」
院長 「かくかくしかじかと説明できた気がする」
スタッフ「…」
院長 「かくまくCかGか、と」
スタッフ「果てしない絶望を抱え込みましたね」
ネタ元
Scientists Discover Why Cornea Is Transparent And Free Of Blood Vessels, Allowing Vision