進路

 あまり経験したことがない相談事があったのでメモしとこうかと。
 昨日ボクより少し年下の親しくしている先生から電話があった。二ヶ月ぐらい前に、近くの高校生が進路を決めかねているからといってその先生の診療所に来たそうな。その学生、以前に診てもらったこともあるともいうので、先生は記憶にはなかったけど相談に乗ってあげたのね。
 なんでも高校一年生で選択の一つに医者も考えているとのこと。で、その職業の将来の展望を現場の医者に直接聞いてみようということらしい。


 ウチの診療所は、医者の品位を下げるだけでなく、平均収入を下げることにも多いに貢献しているので、比べるのも失礼かもしれないけど、その先生のところは、ここよりもはるかに羽振りがいい。それでもきびしい医療経済のなかで、なかなか四苦八苦されているのも事実。
 で、その学生さんにきびしい現実をトクトクと話しされたそうな。
 学生さんの心の内の結論はどうか知らないが、彼が帰ったあと、よく考えると、若い芽吹きをつみ取ったことになったんじゃなかろうかと、その先生、気にされ始めたのね。もう一度会って話した方がいいかもしれないと考え始めたものの、診察じゃないから名前も知らず、もちろん住所さえ分からないから対処に困っていたらしい。
 でも、つい最近床屋でその話をしたら、そこのおやじが思い当たる学生がいるということになって、あとはズルズルと身元が判明したわけ。
 で、こんな話、ボクならきっと関心持つんじゃなかろうかということで、まだ日にちは決まってないけど、学生にジュースでもおごりながら、三人で話してみないかというお誘いの電話だった。
 おもしろそうだから、もちろんOKしたんだけど、さて一体なんといったものか。
 医学の学問を目指しているのであれば、それは医療経済とは若干異なるから励ましもできるだろうけど、開業医に進路を聞くというのはやはり医療行為そのものに関心があるのだろうね。
 その先生のいうとおり、開業医の未来ってのも明るくないしなぁ。勤務医は勤務医でいろいろつらいこともあるみたいだし。
 こりゃビールでも飲みながらじゃないと、とても話しできないだろうなぁ。
院長 「大麦もビールになろうとして生まれてきたんじゃないんだよね。飼料になる大麦もあるし、なんというか、なんになるかは分からないんだよね」
学生 「先生は運命論者なんですか?」
院長 「あ、いや、ビールに関しては、うんめぇ論者だけど」
学生 「まじめに答えてください」
院長 「あ、ちょっとカラオケでも歌ってから冷静に考えようか」
学生 「なに歌うんですか」
院長 「勝手に進路バット」
学生 「‥‥なーんにも考えてくれてないでしょ」
院長 「はい」
 ホント、なんてアドバイスすればいいんだろう。ちょっと考えちゃうなぁ。

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