「本日はお日柄もよく」

平凡なOLが結婚式でのスピーチをきっかけにプロのスピーチライターとなり、果ては日本の政界を大きく動かすことになる選挙の後ろ盾になるという、少し突拍子のない物語であるが、大好きな原田マホさんの作品だからと最後まで読み進めた。

結婚式のスピーチといえば、昔とても気の合う同僚医師から結婚式でのスピーチを頼まれたことがある。
白のハンカチを表彰状を読み上げるように手にし、新郎の人柄を冗談を交えて褒めたたえたあと、最後に彼への思いを寄せて、宮沢賢治の「雨に持負けず風にも負けず」をそらんじた。終わったあと、その場にいた方々からそこそこの評判をいただいたのだが、とても残念なことに彼はもういない。

小説にこんな言葉が出てくる。
「困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、頭を上げている。三日後の君、歩き出している」

とても勇気の出る素晴らしい言葉だと思う。でもこの言葉では彼を納得させることはできなかっただろう。
すべてを語りきれる言葉などない。だからこそ、人は本を、言葉を追い求めているのだと思う。