西洋人と東洋人

oriental
 奇妙な体験の一つや二つ、みんな持っているだろう。すでにこの世にいない人の声を聞いたとか、いつのまにかダンナかカミさんが布団のなかには入ってきたなどというような霊的体験なら興味がわくが、院長のはそうではない。
 テレビの画面を見てて、どこを見ればいいか分からなくなったのだ。物心つき始めたころだった。
普通画面にはカメラが捉えたいものが中心に映っているものだろう。だが当然回りのものも映っている。そのことに気づくと、どいういうわけかどこに焦点を当ててテレビを見ていいのか分からなくなってしまった。


 不思議なことに一ヶ月ほど過ぎるとまた元のようになんの疑問のなくテレビを見ることができるようになっていた。
あの経験はなんだったのかと長年不思議に思っていたのだが、それが今ようやく解けた。
 米国で学生を対象に、西洋人と東洋人では画像を見るとき目の動きに違いがあるのかが調べられた。学生は東洋系と西洋系の2つのグループに分けられている。画像はジャングルのなかにいるトラのように、目立つものが真ん中に描かれている。
すると西洋系の学生は、見るべき中心に焦点を合わせ、東洋系は周辺を含めた全体を見ているという結果が出たのだ。
 あの体験は、東洋人になるか西洋人になるか、選択を迫られたものじゃなかったのだろうか。
 折しも洋画に興味を持ち始めたころだった。
 銀幕に登場する西洋人の顔立ちにそれまでの美の視点が動揺する。朝起きると冷蔵庫からミルクのボトルを取り出す西洋式の生活にあこがれる、そんなころだった。
 現実は毎朝食卓に出る大豆ミソと鏡に映る自身しかなく、出るのはため息だけだ。だがふたたび洋画に見入ると、いつのまにかまた希望が湧いてくる。
そうした葛藤を繰り返しているうちに、ついには耐えきれなくなった本能が取らせた行動が、あのときの体験だったような気がする。
 テレビの画像の周辺が気になりだしたということは、きっと本能が「オメェ、東洋人だろ」と叫んだのだ。
 もちろん幼いころより理性で行動していた院長のことだ。そうした本能のなすがままには選択しない。
おかげで、ベッカムに似たおやじになれた。
 え、似てないって?それはあなたが、全体をボーとしか見ることしかできない東洋人だからだ。たぶん。

西洋人から見られるときは、なるべく画面の周辺にいることにしたい。
ネタ元
Westerners and Easterners see the world differently

“西洋人と東洋人” への2件の返信

  1. テレビに写ってるカッコイイ人みんなが彼に似ているように見えます!・・・悪い病気にかかってるのかなぁ。

  2. 草食

    海外ドラマなどの深みのある照明を見て、その技巧にしばしば感心する。 この傾向は絵画やマンガ、アニメーション、イラストなどにも表れていて、西洋の物は奥行き、陰影、立体感を強調している場合が多い。 逆に東洋の場合は空間や色彩(の対比)、輪郭などに主たる配慮がな

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