歩測

 ことわざとしてちょっと意味が違うかもしれないが、蟻に下駄を預けた研究者がいた。研究者の関心事はどうして蟻が方向を間違えずに巣に戻ったりエサのところにたどり着いたりするのだろうか、ということだ。
 砂漠蟻はエサを探しに遠くまで行ってもほとんど直線的に巣に戻ってくることができる。回りはほとんど目印のない不毛の砂漠なのに、だ。この事実について科学者たちはいろいろな仮説を立ててきた。
 ミツバチのように回りの景色をたよりに行動しているという説は蟻たちは暗闇のなかでも同じ行動をすることから否定された。ほかの研究では蟻たちはお互いに情報を交換しあっていることは分かったが、それ以上の進展はなかった。


 歩測しながら行動しているのではないのか、という説もその一つだ。1900年初頭に出された説だが証明ができなかった。
 そこで今回研究者が思いついた発想はこうだ。
 足の長さを長くしたらどうなるのか。ということで下駄ならぬ棒を蟻の足につけてみた。これを蟻足と呼ぶべきかどうかは別として、当然短くすればどうなるのかも考えなくてはならない。ということで足を少しちょんぎることもやってみた。
 まずなにも足に手を加えていない状態で巣から9m離れたところにエサを置く。やがて蟻たちにその在処がバレルと、蟻たちはエサのところへまっすぐに進み始めた。
 その蟻たちの足に棒をつけて歩幅を大きくすると、つけられた蟻たちはエサの在処を通り越してやがて直進するのをやめてしまい、ウロウロし始めた。一方足を短くされた蟻たちはエサの手前で直進をやめウロウロし始めたという。
 かくして歩測で場所を測っているということが分かった、というのがネタ元の内容だ。
 なるほど、おもしろい発想の実験だ。だがこの結論には重要な発見がもう一つ含まれている。それは1900年初頭どころか何百年もまえからいわれてきたことだ。今それが証明されたことに研究者は気づいていない。
  重要な点は二点ある。エサとなる食べ物がどんなものかはネタ元に記されていない。だが蟻の大好きなものだったに違いないということが一点。そしてこうしたエサは動物を用いた実験では”ご褒美”としてよく登場するようなものだ、ということが二点目。
 短くすることで褒美に届かず、長くすることで大好きなエサにありつけなかった。
 ということでこの研究が暴き出した隠された真実はこうだ。
 
 褒美に短し大好きに長し。

 …ちょっと違うかもしんないけど。
ネタ元
When Ants Go Marching, They Count Their Steps

“歩測” への2件の返信

  1. カミさんの感想は、「何万歩か知らないけど、よく数えられるね」でした。

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