友達のちょっとした思いやりが傷を早く癒すんだよという科学ニュースより。社会的なサポートが健康に与える生理学的な影響を研究している人たちの報告で、簡単にいうとこんな感じの実験をした結果、ストレスは傷の治りを遅くし、社会的な接触はそのストレスの作用を押さえることが分かったという。


 もしそうだとすれば、より現実的な話としては、入院なぞしたときに、友達なりが見舞いに来てくれれば、早くよくなるということだ。
でもね、研究者は重要なことに気づいていない。つまり友達によりけりだ、ということに。
 たとえば酒で肝臓が傷ついているときに、飲み仲間が見舞いにくるとしよう。そうした連中は必ず酒の話をするに違いなく、ときには、「肝臓の鍛え方が足りないんだ」とかなんとかいいながらあからさまにビールを口にすることを勧めるかもしれない。
 もちろん、肝臓の傷の治りは遅れる。
 ということで、見舞客の条件をメモしておこうかと。
 まず、お金持ちでないこと。ろくに保険なんか入ってなく、明日のメシをどうして得ようかと悩みながらベットに横たわっているときに、のうのうと外国旅行の話でも聞かされた日にゃ、かなわない。
 同レベルの収入もしくはそれ以下の人だったら、ぜひ扉を叩いて頂きたい。おみやげは、名古屋の”ういろう”をお願いしたい。その友と、なんで世の中を回っているお金から毛嫌いされているかを一緒に考えてみたい。もちろん答えに気づかないような相手だ。ういろうを口にしたその困った顔を見て、お腹のなかで小馬鹿にする。
「だから貧乏人なんだよ」
 もちろん口には出さない。相手もこちらをそう思っているのは間違いないから、それを口に出せば、こちらも被害に会う。
 それとベッカム顔にはぜひお断り願いたい。いくら入院前は似てたからといっても、やせ細っている顔と比較されたくはない。
 世にもてはやされる容姿の方、以外だったら、ぜひ来て頂きたい。おみやげは岡山の”笹ようかん”をお願いする。
 それを食べながら、ぜひ夜を徹して、なんであやつらだけもてるのか、論議してみたい。もちろん答えなんか髪の毛ほどにも分からない相手のことだ。そのうち困った顔を見せるだろう。それを見て、お腹のなかでこう小馬鹿にするのだ。
「こっちの方がマシだな」
 もちろん口には出さない。笹ようかんを口にした相手もこちらをそう思っているのは間違いないから、それを口に出せば、こちらも被害に会う。
 最後に若い人は遠慮願いたい。トライアスロンなんかでいい成績を出してるからとって、いずれ老いていくのだ。子犬の頭をゴツンとすれば、弾性を失った小指の腱などすぐに切れてしまう老人になってしまうのだ。
 だからある年齢以上の方だったら、喜んでイスを差しだそう。おみやげは、長崎の”カステラ”でがまんしよう。
 お互い喉にカステラが詰まって仕方ないかもしれない。きっとそのときは、こう思うだろう。
「こんなやつよりは、若いな」
 もちろん口には出さない。お茶を手にした相手もこちらをそう思っているのは間違いないから、それを口に出せば、こちらも被害に会う。
 以上が条件だ。
 ようするに、見舞客は、”傷をなめ合うような相手”が傷には一番いいような気がする。

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