親心

 夜、「猫瓶」(ねこべい)という居酒屋にいったときのこと。宮崎駿夫のお話に出てきそうな不思議空間で今日はだれもお客がいない。その代わり店主ご夫婦の6才になるチビちゃんが店内に流れるピアフのシャンソンに合わせて鼻歌混じりに口ずさんでいるってカンジの店でして。


 そこのオヤジと盛り上がった話のひとつ。ナオトくんというチビちゃんなんだけど、そのナオトくんが幼稚園で音楽会があったそうな。で、おやじがいうにはナオトが司会をしたという。
「へーすごいですね」なんてボクが感心してると、横から奥さんが口をはさむ。
「せーのって合図を出しただけですよ」
 オヤジはなにも反論しなかったけど、「それでも司会だろう」ってカンジでちょっと不思議そうな顔をする。
 40代半ば近いということだから遅めのお子さんできっと可愛くて可愛くてたまんないのだと思う。きっとオヤジはナオトくんと同じ視点でその場に立ってたんだろうなぁ。
 ナオトくんが見える風景がオヤジの目には映り、ナオトくんの身体を走るアドレナリンが同じようにオヤジの体内を駆けめぐっていたんじゃなかろうか。オヤジにとって「せーの」と声を発する瞬間はやはり司会者の緊張と同じだったのだろう。
 だから端から冷静に状況を説明されても、ピンとこない。いつもオヤと不思議な気持ちを抱くだけ。
 つまり オヤ、ばっか というわけね。

(上のリンク先の写真は以前の瓶屋さんのときのもの。現在「猫瓶」のHPは制作中とのことでした)

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