肉体的にも医学的にも院長には力がない。そのせいか書店で平積みしてあった力学の書物を無意識に手にしていた。
「一度読んだら絶対に忘れない:物理の教科書」(池末翔太 著)
長年塾で物理を教えたいた方の著書で、とてもわかりやすいニュートン力学の本だ。
でも昔から気になっていた遠心力を含めた慣性力についての疑問は解けなかった。
院長の診断力が見せかけなのは分かる。でも慣性力が見せかけの力とはいったいどういうことなのか。
そもそも見せかけとはいったいどういうことなのか。診断力がないのにあるように見せる、それが院長の見せかけの診断力だ。
ということは見せかけの力とは、力がないのに、あるように見せる、あるいは見えるということになるが、たとえば自動車に乗ってカーブを曲がれば体は右か左に倒れるではないか。そこには力が働いているように見えるが、それがないというのか。
どうもしっくりこない。
そこで改めてネットでググるといろいろおもしろい見解がヒットする。だが結局あるのかないのか、はっきりしない。
それでもいくつかのヒントが得られた。たとえばJAXAにあるこうした表現だ。
「”力が働いている”と考えたとしてもおかしくはない」
つまり想定しても矛盾はない、ということだ。結局それでいいのだろう。
ふと数学の虚数を思い出した。
虚数はあるのかと問われれば、あるともいえるし、ないともいえる。どちらでもいいことで、ようはそんなものを考えれば、いろんなことがうまく説明できるのだ。
慣性力もそんなものなのだろう。
知らんけど。