ヒトの進化の過程であるとき原始人類のなかに長生きするものがでてきた。彼らがその後のヒトの繁栄に大いに貢献した可能性があるという説があるそうな。
「自分の子育てを終えた世代が孫の世話に加わり、知識や経験を次の世代へ引き継ぐようになると、その一族は繁栄する」ということで、この仮説には”おばあちゃん効果”というネーミングがつけられているらしい。
”年寄りのいうことはよく聞きなさいよ”という、小言めいた仮説だなぁというのが第一印象。まぁ反論しても仕方のないことだし、反論もできないけど、あるいは”あんな年寄りにはなりたかねぇな”ということで、若い連中ががんばった結果、ヒトの大いなる繁栄につながったのかもしれない。
それはさておき、おばあちゃんっ子であった少年院長には、忘れられない思い出がある。
人生で大きく傷つくことも知らずに、少年院長は元気に遊んでばかりいた。といっても幼い頃はおばあさんの周りでサルのようにじゃれつくだけ。それでもアホな小ザルは膝や肘を壁やドアにぶつけてしまう。
であるとき膝を打った少年院長は、半べそをかきながら、傷をおばあさんに見せたのね。かわいい孫がケガをしましたよって訴えたわけ。すると彼女、よしよしと小ザルの頭をなでながら、傷を見た後、やおら手に自分のつばをべったりとつけて、それを少年院長の傷口に塗った。
幼いながらも、孫を思う気持ちは伝わってくる。気持ちは伝わってはくるけど、つばも膝を伝わってくる。
そのとき少年院長は、なにかを学んだ。
アホな小ザルのこと、ケガは一度で済むわけがない。で、今度は肘を打って、そばにいるおばあさんにまた見てもらった。
なにを学んだかは定かでないが、とにかくなにかを学んでいた小ザルは傷を見せたはいいけど、ただちに危険を察知する。
で、先手を打って自分のつばを手につけて、これでいい?ってな具合に了解を取り付けようとしたけど、おばあさん、かわいい孫の傷が少しでも早く治るのを願ったのか、再びたっぷりと手に自分のつばをつけ、傷口へ。
一度目は仕方ないにしても、二度目を食らうとは。
おばあちゃんっ子、うかツーだった。