記憶と睡眠


 最近記憶力が落ちてきた。アボガドロ定数がどうしても思い出せない。最初から覚えていたのかどうかの記憶もあいまいになってきている。
 なぜなのか考えていたら、近頃ぐっすり眠れていないことがその原因かもしれないとの思いにいたった。 
 ベルギー大学の研究者らが睡眠と記憶の関係を明らかにする糸口をつかんだという記事を読んだからだ。


 認知された情報は一時的に脳の海馬に保存され、それが数ヶ月して前頭皮質に送られるということは分かっていたらしい。だが、それがどういう具合に進んでいるのか詳細な仕組みは解明されていない。
 今回研究者らが18名の被験者を対象に調べてみると、学習したあとの良好な睡眠は海馬と前頭皮質の間の情報の移動をスムースにし、逆に睡眠障害はビールを求めて冷蔵庫に向かう院長をさえぎるカミさんのように、海馬から前頭皮質への移行に障害を与えていることが分かったという。
 まず被験者に90のペアの単語を覚えてもらい、どれほど覚えているか、すぐにfMRIという脳の働きを見る検査を行いながらテストする。
 次に18名を二つのグループに分ける。一つは普通通り夜眠りにつく”通常組”で、残りはTVを見たりゲームをしたり音楽を聴いたりしながら夜を明かす”徹夜組”だ。
 
 最初覚えてもらった日から二日後、二つのグループの記憶の具合を調べると、徹夜組は通常組より明らかに単語を忘れていて、かつペアの一方を聞かれたとき、通常組の海馬の活動は徹夜組より活発であることが分かったという。
 
 さらに半年後にテストしたところ、どちらの組もほとんどペアの単語を忘れてはいたが、通常組は徹夜組より前頭皮質がより活発に活動しており(写真はそのときのもので、右の海馬にあたる部分の活動は少なく、左の前頭皮質にあたる部分は活発に活動している)、一方徹夜組は海馬の活動がより盛んだったという結果だった。
 まとめてみると、通常組の方が記憶の出発点になる場所である海馬に情報を多く貯めておくことができたということ、また思い出せなくても通常組は長期の記憶として前頭皮質に情報を送り込んでいたこと、さらには徹夜組は情報を海馬のところに置いたままで前頭皮質に送り込めてないということ、になるようだ。
 今後睡眠と記憶の関係がさらに明らかなることで、より記憶の仕組みが解明されていくだろうと記事には述べられている。 
 
 なにはともあれ、記憶力を保つにはぐっすり寝るに限るということだ。
 最近、眠れていないのはアルコールの量を控えさせられているせいではないかと薄々感じている。もしそうだとすると、このままでは記憶力がますます低下していくのではないかと気が気でない。
 こうなったらビールの増量をカミさんに願い出るしかない。いくら鬼ようなカミさんでもこちらが呆けるのであれば認めざるを得ないだろう。



ネタ元
Quality of Sleep Determines Where the Brain Stores Memories

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