「ノースライト」

横山秀夫さんの新作「ノースライト」を読んだ。
ノースは北で、このライトは right ではなく light。つまり西日ならぬ北日のこと。
氏の作品群をネットで見てみるとおそらく8割近くは読破しているから、きっと自分では好きな作家のひとりになるのだろう。

ストーリーは著名な建築家、ブルーノ・タウトに絡んだもので、このノースライトという言葉は、おそらく建築業界用語だと思われる。ふだん北を向いた部屋というのは陰気くさいイメージを持つ。だがそこに注がれる淡い光をうまく使いこなせば優雅な空間を演出することができるらしい。

でも貧弱なイメージしか持ち合わせてないオヤジはいつのまにか置いてけぼりを食らってしまう。
字面を追ってはいるものの、そういえば「薔薇の名前」のウンベルト・エーコを雲帯英子と書いていた作家がいたな、だれだったっけ、といった話とは関係ない疑問が、ページをめくるたびに、とはいえないものの、ストーリーが複雑に展開していくなかでふと頭をよぎってしまうのだ。
 
というのは、主人公の名前が 青”瀬”という、名前としては希少であること自体が、また物語の小さなモチーフになっているのだが、どうしても ブルーノ の 青”野” のイメージが抜けない。だからなんだといわれても仕方がないが、読み終わってひとりで言葉をつむぐ独語感想とはそんなものだろう。 

つまり面白かったのか、と聞かれたら、ノース。ライト? というのが正直な感想だ。
え、意味が分からない。じゃ聞くけど、院長室のメモは面白くないだろう? って聞かれたら? イエス、ライト? と答えるでしょ。

(今日からちょっと英語圏へ。 right に ? をつけると「……だよね?」という意味になることをにわかトラベル学習で知ったしだい。ついでに 面白くないだろう? って聞かれたとき、本当に面白くなかったら イエスなの?、ノーなの? だいじょうぶか、オヤジ)