昨年来、”枝番”が保険証に追加されている。
従来の世帯単位での記号、番号ではオンライン資格確認ができず、個人単位化の番号として新たに設置されたものだ。
その仕様を見ていると、なんとなくミトコンドリアを連想したのでそのいきさつを述べたい。
まずオンラインのレセプトはコンマで区切った文字列の塊で、とても大雑把だが、こんな感じで構成されている。
HO,1111,2222,,,,,
SY,2720004,,,,,,
IY,,,610421321,,,,,
SI,,,160072210,,,,,
翻訳すると、
保険者 1111 2222
傷病名 高コレステロール血症
医薬品 アダラートCR錠20mg
診療行為 超音波
となるのだが、先頭の HO、SY、IY、SI の記号はそれぞれ保険者、傷病名、医薬品、診療行為を意味しており、そのアルファベットは日本語をローマ字表記した最初の二文字になっている。
実はカンマの間にはほかにもいろいろな情報があり、かつ将来的な変更のために空白の個所がたくさん確保してある。
保険者番号の HO 項目も同様なのだが、その HO の空所に枝番を当てればいいものの、枝番としての新しい項目が登場している。
そしてその項目は枝番だから従来のルールでは ED になるはずだが、SN の二文字が付与されている。個人に振り当てられる番号 serial number の略だろう。
つまり、細胞のなかのほかの小器官と異なる出自を持つミトコンドリアと同じようなものとして枝番が登場しているのだ。
これが類似の1点目。
実際の運用を見てみる。たとえば枝番 11 では レセプトでは
SN,,01,,,,11,,
と少ない情報で構成される。だが、保険者に届いた情報は保険者番号が入った情報が現れることになっている。
つまり保険者番号が
HO,12345678,AAA,BBBBB,,,,,,,,,,
で枝番が 11 の患者さんの場合 SN,,01,,,,11,, と書かれた情報は
SN,,01,12345678,AAA,BBBBB,11,,
となる。つまり HO と同じ情報が繰り返されるわけだ。
同じ細胞内で自己複製するミトコンドリア、それを想起させるではないか。
ということで類似の2点目。
そしてこの枝番が「オンライン資格確認を行うため」のいろんな紐付けの原動力になるらしく、エネルギーを供給し続ける点はミトコンドリアとまったく同じだ。
はい、類似、3点目。
ということで、とてもニッチな話だが、連想の経緯はざっとこんな具合だ。
まぁ、ミトコンドリアに似ていようがいまいが、きっと医療情報のいろんな紐付けはさまざな利便性をもたらすのだろう。それはそれで楽しみな未来でもある。
ただ文章を読み返すと、こうしたアナロジーは少し強引過ぎるような気もする。
きっと、そうした批判も当然あるだろう。
でもこの強引さを少しも恥ずかしいとは思わない。
マイナと保険証を紐づけようとするお上の強引さに比べれば、ずいぶんマシだ。