バッジ

 昨日からコピーした音楽CDを探しているんだけど、ラベルを付けてなかったせいもあってか、どこに行ったか分からなくて困っている。で探しているとき思い出したこと。


 もし「学級委員経験者全国連絡協議会」なんてのがあればきっと役員に名前が並んでもおかしくないほど、小さい頃からボクは学級委員をやってきたのね。
 でも学級委員なんてのは、岡っ引きに仕える十手持ちみたいなもの。それも下っ端のね。
 たとえば職員室で担任からの伝言を受け「へい分かりやした」ってな調子でクラスに戻る。で、内容を伝えるわけなんだけど、たとえば自習で宿題のようなものを出されたときなんか、ボクが出したわけでもないのに「なんでぇ」とか責められて困り果ててしまうわけ。
なんともなさけないポジションなんだけど、それをごまかすのに役立っていたのが委員長バッジ。なんだかんだいってもクラスに一人しか付けないから、ありがた味があるのも事実。
 で、そのバッジを小学校二年生のときなくしてしまって。
 家に帰ってから気づいたんだけど、あわてて部屋のなかを探してもない。母親に相談すると通学路に落ちてるかもしれないということになり、一緒に道路を探しまくったんだけど、結局出てこず、そのときは再交付してもらうことで一段落だったのね。
 でもね、三年になったときもまたまたバッジをなくしてしまって。同じように母親と家の中や道路を探したんだけど、これも出てこない。
 で、そのとき心やさしい母親が語ったこと。
「占ってもらうしかないね」
 エッ?、と思ったけど、幼少院長に口答えなどできるはずもなく、黙って連れて行かれたのが、近くの長屋の一軒。なかに入ると鐘やら花が飾られた祭壇があり、その周りを薄暗くロウソクが灯っている。その前で白装束のおばさんが座っていて、母親と二人、かしこまって対座し、落ちている場所を占ってもらったわけ。
 そのおばさん、むにゃむにゃ、なにかつぶやいた後に語ったのが占いの結果。でもそれがいかにもあいまいなものでして。
 分かるんだったら、たとえばタンスの裏とかお菓子屋さんの前の溝とか具体的にいってくれればいいのに、そんなことじゃなく、西だったか東だったかわすれたけど家からの方角しか教えてくれず、そっちの方を探せという。
 母親は納得したのかどうか分からなかったけど、とにかくそこを出ていわれた方向をたよりにまた探し続けたけど、やっぱり見つからなかった。
 そのときも結局学校から再交付してもらってたんだけど。
先生    「またなくしたのか」
幼少院長 「すいません。占いまでして探したんですけど」
先生    「占いはなんと出たんだ」
幼少院長 「はい、名前がいけないと」
先生    「どういうことだ?」
幼少院長 「ミズマチだから miss バッジ だと」
先生    「……」
 まぁ母親は普段から信心深いといえばそうなんだけど、あのときはホントきつねにつままれたようなカンジだったなぁ。
 などと思い出しながら、またCDを探し続けたわけでして。

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