ロクロ

 今日の昼、ある窯元の陶芸教室を見学しにいったときのこと。十人近くの生徒さんがいて、なかにはロクロを使って器用に形を作られてる方も。
 ロクロの上でグルグル回る土の塊が、ニュルっと縦に伸びたり、パッと横に広がったりしていく様は見てるだけで楽しい。
 もちろん一発でいいのができるようではなく、生徒のみなさん、試行錯誤を繰り返して、求める形を追われていた。


 で、気づいたこと。当たり前といえば当たり前のことだけど、ロクロというのにも、いい悪いがあるみたいなのね。
 ほとんどは回せば問題なく作業に移れるみたいだけど、ひとつ、重心が微妙にずれているのがある。そのロクロに、モノを置いて回すと、回転が終わろうとするときのコマのように、すぐにモノはブレ始め、ついには置いた位置から大きく動いてしまう。
 実はそこの先生とはなんどかお酒の席を一緒にさせてもらったことがあり、その日も昼間からお酒で歓待されてて。で、伺った話では、そのロクロ、なんでも先生が陶芸を始められたころから使っていたらしく、使いこなすには、それ相当の年期がいるそうな。
 お酒の勢いも手伝ってか、いつしか先生の口から出始めた遠い昔の話を聞くと、陶芸の道に入るのに随分と悩まれたとのこと。土ひとつで生計を立てるわけだから、こちらがいくら素人とはいえ、その心情はよく分かる。
 そのうち生徒さんから、新しいのを買ってくれなどと冷やかし半分のクレームが返ってくるけど、先生、手にしていた焼酎をゴクリと飲んで笑っておられただけ。
 こうしてメモしてて思うんだけど、あるいは先生の目に映るロクロは、有るべき位置からずれようとする自身を、必死にくい止めようとしたご自身の心じゃなかったのかしら。
 大海原に陶器という小さな小舟でこぎ出る。ときには横から襲いかかる波や吹き付ける風に、舵を取られまいと必死に魯を握りしめる。
 人生も一緒。あるいは沈んでしまうかもしれない。それでもしっかりと魯を固定して、向かうべきものへと突き進む。
 まさしく、ロック魯…
などと少女趣味を披露しても、その場では、空いたビールの缶を眺めるふりをしながら、まだ飲み足りないなどと、そばにある冷蔵庫を横目でロックしていたりして。

逍山先生、奥様、とても楽しい時間をありがとうございました。上野英信さん、山本作兵衛さんの話、とても興味深かったです。先生の皿で盛った料理、格段にうまいです。
柾木(まさき)さん、心情を察して頂き、次から次ぎへのビール、ありがとうございました。

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