座りっぱなし

自分はりっぱな医者だと思う。患者が来なくてもじっとイスに座って待っているのだから。こんな暑い夏の日は海辺へいくのが一番なのに、それでも汗をかきながらじっとじっと患者を待っている。おのれはなんと患者思いの医者なのだろう。そんな感慨に耽っていたらこんな記事があった。座る時間が長いと死を早めるというのだ。


およそ12万人(うち男およそ5万、女およそ7万人)を対象に1993年と2006年の間で座ったままのことがどの程度死亡に関連していたかを見た米国の研究があった。一日で6時間以上座っている人と3時間未満しか座っていない人を比べると6時間以上座っている人の方が女性では37%。男性では18%、より多く死亡しているというのだ。
そうか、このままだと早死にするのか…せめて患者が来院し、内視鏡でもなんでもいいからこちらが体を動かすことができれば、こんな記事などに動揺しないのだが。
お前は早死にしたいのか。そんなことなら海辺の飲み屋あたりでビールでも飲んでた方がましだぞ…そんな誘惑の声を発する別の自分に気づいたりもする。
いやいやダメだ。お前はそんな自堕落ではないはずだ。早死にしてもいい。患者のためだ。じっと待っていよう。待つしかない。
きっと世間は院長のこの清廉な気持ちを分かってくれるはずだ。やがて訪れる早い死-きっと最後は診察机に面伏していることだろう-は新聞をはじめいろんなマスコミでもてはやされるに違いない。ああ、そんな清らかな気持ちを持った医者がいたのか。なんとりっぱなことか、と。
そしてその見出しはこうなるはずだ。
すわ、りっぱな死。

ネタ元
Study links more time spent sitting to higher risk of death

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