慮る(おもんばかる)

幼いころ、住まいは小さな商店街のなかにあった。そこに月になんどか行商のおばさんたちが来て、品物を売っていた。そのとき使っていたのが、さお秤。野菜や穀物など、量を小分けにして天秤に掛けられるものをさお秤の皿に乗せ重さを計量し値段を決めていたのだ。
子供ながら、なぜこんな簡単な道具で重さが図れるのか不思議だったが、その重さの単位であるキログラムの基準が変わるという。

なんでもプランク定数という、きわめて小さな数値を用いた基準になるらしい。このプランク定数、どれくらい小さいかというと、おおよそ6×10のマイナス34乗。

ああ、そうなんだ、としかいいようがない。

でもね、さお秤で計っていたおばさんたちは、じゃあ、おまけ、などといって、皿にそこにあるいくばくかの商品を追加してくれたものだ。竿秤の原理が分からなくても、当然加えられた分だけさおが傾く。その分、客は笑みを浮かべ、そしておばさんも微笑む。

あのときのさお秤は重さをはかる道具というよりは、お互いの心の重みを測る道具だったのかもしれない。相手を重んはかるとはこういうことかもしれないなぁ、などとプランク定数が判らないものの遠吠えとして、プランク定数よりはるかに小さなメモを残しておく。

改定された単位の定義、宇宙と世界の何が変わる?