ニコチンワクチン

vaccine
 コンビニの前でタバコを吸っている悪ガキにはできないが、患者には堂々と喫煙をいさめている。
 その際使うセリフとして以前読んだ本の受け売りなのだが、なかなか気に入っている言葉がある。「あなたは二重人格者だ」というものだ。
 ほとんどの喫煙者はタバコを初めて吸ったときむせた経験があるはずだ。部屋のカーテンさえも黄色くしてしまうあのような煙を吸い込めば当たり前のことだ。ところがそれが今は旨いと日に何本も吸っている。不思議ではないか。


 これは喫煙をしたいというもう一人の人格ができていて、そいつが要求していることなのだ。いつもいつもあなたの耳元で「タバコはおいしいぞ」と語り続けているのだ。生半可な気持ちでやめようと思っても、「タバコの味を忘れたわけじゃないだろうな」とワーワーと叫び続けるのだ。だからあなたのなかのもう一人と戦わなければならない。
 こんな風に諭して聞かせると、人格が欠如しているものからいわれているとも気づかずに大方が納得しているようだ。
 この闘い新たに加わろうとしている武器が登場しつつあるという記事があった。
 ニコチンワクチンだ。ニコチンと結びついてニコチンが頭のなかに入っていくのを防ぐタンパク質を作り出すというものだ。今までにもニコチンパッチなどの武器があった。それらはニコチンを身体に吸収させることで徐々にニコチン依存から抜け出すことを目的としたものだ。
 だが今回のは違う。ニコチンが体内に入ってもそれをうまいと感じる部分をブロックするのだ。つまり喫煙を勧めるもう一人の自分の口を押さえるようなものだ。
 武器は実用化の一歩手前まできていて、目立った副作用もない。さらには効果のほどを調べるものではないあるテストでも、参加したボランティアの30%が一ヶ月以内に禁煙できていたというすぐれものだ。
 すばらしい研究だ。いまでこそタバコはたしなまないが、あと30年早く出てきていれば黒いのはお腹だけですんだはずだ。
 ただワクチンという言葉の使用には若干の戸惑いを感じる。というのは細菌とかウィルスとか感染を起こす生き物に対して人が持っている免疫の仕組みを利用するのがワクチンなのだ。だからニコチンに対するワクチンというのはどうなのだろうか。
スタッフ「じゃあなにが適当ですか」
院長  「ワーワーいってるもう一人のやつを黙らせるのだろ」
スタッフ「はい」
院長  「口を”ン”と閉じさせる」
スタッフ「はい」
院長  「だからワーワークチん」
スタッフ「メモしばらく休んだわりにはオチないですね」

ネタ元
Nicotine vaccine has promise for helping smokers quit

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