ナンバーディスプレイ

 ナンバーディスプレイがクリニックにやってきた。
 この電話についてご存じない方のために説明すると、ナンバーがディスプレイされる電話だ。略してナンバーディスプレイという。

 思い起こせば、幼い頃から返事だけははっきりするようにしつけられてきた。せめて、元気よく返事できる大人になって欲しいという、アホな我が子を持ったせめてもの親心だったのだろう。
 おかげで夜の街のカウンターのなかの知らない女性にも元気にあいさつできるようになっている。
 でもね、世の中にはあいさつができない人がいるのね。大人だか子供だか、女性だか男性だか分からないけど、電話をかけてきても黙ったまま。
 数年前のことだけど、数週間に一度、診療時間中にそんな電話がかかることがあった。
その電話の主は、しばらく黙ったあと、「トロを出していいか?」と明らかなオヤジ声で訊いてくる。ときにはあえぎ声も混じっている。”トロ”という医学用語は聞いたことはないけど、どうも男性特有の”排泄物”を意味しているようす。
 一方的な会話で最初スタッフも気味悪がっていたけど、なにが起こるわけでもなく、そのうち受話器を置いたままにして、仕事をしているうち、いつの間にか切れているなんてこともあったりしてた。
 でも繰り返されると、なんとなく頭に来るもので、あるときスタッフが受話器を取ったあと、気づかれずに交代し、しばらく聞いたあと、「バカヤロ」って怒鳴りつけてやったのね。
 それでもしばらく間を置いてかかってきてたんだけど、そんなことを2,3回したあと、ようやく懲りたのか、かかってこなくなった。
 まぁ今後も、あまりそんな方たちと知り合いになるのもどうかと、遅ればせながらこの電話を入れたわけで。
スタッフ「じゃあ、そんな電話がかかったら、ディスプレイされた番号に電話するんですね」
院長  「そう」
スタッフ「で、なんていうんですか」
院長  「女の子の声で、『今かけまチたか』、と」
スタッフ「なんで女の子?」
院長  「気を許すだろ」
スタッフ「で?」
院長  「無邪気に話し続け、最後に『バカヤロ』と叱る」
スタッフ「なるほど。お転婆娘を装うわけですね」
院長  「そう、『おテンバ-です、プレイ』」
スタッフ「…相手も院長と知り合いにならなくてホットしてるかと」

“ナンバーディスプレイ” への2件の返信

  1. せっかくのトコロ水をさすようだけど 相手が184を使ってかけてきたら? 私んちも 夜中にかかるイタ電には ほとほと困ってしまう(ー⑪ー) 相手がわかるなら 耳から指入れて奥歯ガタガタいわしちゃる!くらい ムカついてます(ー⑪ー)

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