「常設展示室」

また泣いてしまった、そうメモすれば、院長の感情失禁がまた起こったのかと勘違いするひともいるだろう。だがしかるべきひとがそう語れば、事態は異なる。
上白石萌音さんだ。

彼女のことはよくは知らない。正月やお盆にあったことがないので、きっと親戚ではないと思う。でもテレビでよくお姿を拝見し、いろんな才能をお持ちの方だなぁと感心している。

その彼女が、「また泣いてしまった」と浜田マハさんの小説「常設展示室」の解説で書いていたのだ。

浜田マハさんも年賀状さえもらったことがないから、親戚ではないと思う。でも美術に関する小説はピカ一だ。どうピカ一かというと、ピカ二でもピカ三でもないから、そうなのはお分かりいただけるだろう。

この「常設展示室」は6篇の短編からなる小説なのだが、最後の「道」を読んで涙腺がかなりゆるんでしまっていた。

普段は本の解説など、さらっとながめるだけであまり読まないタチだ。
だが解説者の名前に上白石萌音とあったので、目を通そうとした矢先のことだ。冒頭で「また泣いてしまった」とあったのだ。

ああ、そうか、泣いてもいいんだ、そういわれた気がし、それからしばらく涙が止まらなくなってしまった本でした。