傷の治り方については随分前から外科の分野で議論されてきた。このメモでも以前膨大な考察を加えたことがある。パソコンの画面で数千ドットは使っただろう。ドットという字だけでも数十ドットはゆうに使っていそうだから大変な量である。
 それでこの議論には決着を見たものと信じていたが、医療関係者のだれもこのメモには気づかなかったらしく またぞろ傷の治り方の報告があった。


 研究者の発想は常人には及びも付かないものがある。実体験がヒントになったのかどうかは定かでないが、オハイオ州立大学の研究者が夫婦の関係が傷に及ぼす影響を調べてみたのだ。
 22才から77才までの42組の夫婦が被験者だ。それぞれのパートナーの前腕に8mmの小さな傷を8カ所つける。実験で二つの状況が作られた。一つは仲良し状況ともいうべきもので、もう一つはケンカ状況とでもいうべきものだ。それぞれ血液データや質問表でストレスの具合を測っている。
 まず最初の実験は仲良し状況だ。代わる代わるパートナーの一方に自分自身を変えたい点について語ってもらい、相手はそれを励ますようにしてもらい傷の治りをみた。
 ケンカ実験は最初の仲良し実験から二ヶ月経ってから行われた。お金や習慣などをめぐってお互い熱くなるような話題で議論しあってもらった。
 結果はこうだ。最初の仲良し状況ではほとんどが5日以内で治ったが、なにかの話題で30分議論を戦わせるというケンカ状況では一日治るのが遅くなった。お互い相手に敵意を抱いているカップルは最初の実験でも治癒までに平均6日かかっていて、ケンカ状況では7日かかっていた、ってなことがネタ元で述べられている。
 さぁ家庭のなかで旗色を鮮明にしようと密かに企んでいる諸君。もう理解できたはずだ。はからずも武器を手にした今、やるべきことはただ一つ。迷うことはない。相手が傷ついているときに議論をふっかけるのだ。
 ただし相手もこちらが傷ついているときに議論をふっかけてくるかもしれないから注意が必要だ。
 こうしたことを繰り返すうちに互いに相手の気配を感じ取り、やがて相手の傷の回復を遅らせるために無言の議論をし合う仲になるかもしれない。なにもいわずにらみ合い、煮えくりかえる心のなかで相手に議論をぶつける。傷の治りをノロクするために無言で議論し合うのだ。
 こういう風な行動をなんと呼べばいいのだろう。考えてみたが思いつかない。
 強いていえば、傷の治りがノロイ合うとでもいうのだろうか。
 まぁいずれにしてもそんな夫婦仲じゃ傷が治る前にたくさん傷つけ合っているような気がするんだけど。

参照
過去メモ
ネタ元
Arguments dramatically slow wound healing

“傷” への2件の返信

  1. この話ですと院長のアキレス腱はビールですね
    ビールは呑めないわ傷は治らないわ・・
    あ、でも傷にビールは良くないから平気ですね
    タメになる記事でした。

  2. よくビールが傷によくないといわれますが、正しくは傷がビールによくないのです。

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