ケーブル

 先日、クリニックにパソコンが一台増えた。クリニックの収入は増えないけど、電気を食うものが増えた。
 でもまぁパソコンの一台くらい養っていくぐらいの度量は持ち合わせている。さらには院長は並以上のパソコンの知識を持っている。
 見知らぬ外国の地で、貧乏だけど優秀なコンダクターがつくようなものだ。ほんとに幸せなパソコンだ。


 実はクリニックにはオンボロパソコンが、数台ある。どうオンボロかというと、インターネットにつなげないのだ。機種が古くてインターネットにつなぐジャックがない。まるで恐竜の化石みたいで、パソゴンと名付けてもいいほどだ。
 じゃあ、ジャックを取り付ければいいじゃないかとの意見もあるだろうが、それでもイッチョ前に仕事してるからあまりいじりたくない。並より上の知識を持っているけど、上よりはるかに下の知識じゃ、リスクが高すぎる。
 だが若い新参者は違う。ちゃんとジャックがある。空にのびるソラ豆の枝を見て、よじ登ろうとするジャックのように、世界を見ようとする意志が感じられる。そんな若者の意志に応えてやろう。いまメモしている、唯一インターネットにつながっているパソコンの仲間に加えよう。
 そう決意して、ここ数日、知識を蓄えた。
 まず大枚1000円を出して、「超入門、2台以上のパソコンのつなげ方」という薄っぺらい本を購入した。「入門」の前の、「超入門」だ。並以上の知識を持っているものなら、容易に理解できるだろうと踏んだ。
 だが、だまされた。難解なのだ。きっと、もう入門を済ませた、つまり入門を越えたものが対象だったのだろう。
 しかし、わずかだが、知識は並より上がった。その知識で電気屋に走る。一時間ばかり前に仕入れた単語を、さも5年も前から知っているような口振りで話す。店員が少しでもその単語を知らない態度を示そうものなら、きびしくつっこんでやろうと気を張っていたが、ついにその機会はなかった。
 ときどき分からない単語が出てきたから、相手も並以上の知識を持っていたのだろう。
 そんなこんなで、必要な機材をそろえて、いざセッティング。
 でもつながらない。そうか理解がまだ不足してるんだと、図書館から本を借りてきて調べるも、つながらない。
 かれこれ十数時間は悪戦苦闘しただろう。だけど、だめだ。
 とうことで、デリバリーのセッティング屋さんを調べてお願いした。
 すると、セッティングは合ってるけど、二つのパソコンをつなぐケーブルが違うという。パソコン同士をつなげるのとインターネットをするのは違うケーブルじゃないといけないそうだ。
 え、ケーブルって一つじゃないの。ホットプレートだって、焼き肉やるときとお好み焼きやるときは同じケーブル使ってるじゃない。
とぐずってみても始まらないので、言われたとおりのケーブルを買って変えてみると、ちゃんとつながるじゃないの。
 そうなんだ、パソコンの知識は並の下なのね、と心が、いじケェー、ブルーになったメモでした。

まぁほんとのとこは下の上ぐらいで、ちょうどなんでしょうね。クスン。

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