変化

コロナがその勢いを増し始めたとき、何人かの患者さんに質問したことがある。戦争を経験されたことが予想されるようなご老人たちに、だ。
ひょっとしたらコロナで世界恐慌などが起こるかもしれない、などと考えていたときで、時代が変わるとき、人はそれを感じ取ることができるものだろうか、という単なる興味からだった。

たとえば映像でしか見たことはないが、戦後、戦中の食料の買い出しなど、大変な苦労があったのは違いないと思う。ただそうした変化は、徐々に訪れたはずだし、そうした変化をどう思われていたのか知りたかったのだ。

結果はこうだった。10人にも満たない数だが、どなたもそれほどの苦痛を感じておられないようだった。つまりいつのまにか、食料が手に入りにくくなり、生活が苦しくなったということだ。どなたもつらい思い出を語る風でなかったのが、印象的だった。

もちろんこちらの質問の仕方も問題があったのかもしれないが、そのとき思ったのが、人というのは、きっとあらゆる状況に徐々に慣れていくものだな、ということだった。

もしろそれができるからこそ、ヒトがこの地球上で繁栄したのだろう。そして、それが将来ヒトが絶滅する要因になるのかもしれない、とも思うのだ。