こんな罪深き院長にも清き一票が届くから驚きだ。それを無視するとまた罪がひとつ増えるのも嫌で、昨日、急ぎ期日前投票を済ませてきた。
院長の罪に気づいている人はカミさんを除いて、どれほどいるだろう。そういう人のためにメモする。
それはこんな具合だ。
何千万という裏金があると聞いて正直、憤怒を抱いた。だが、なにをしても政治は変わらないだろう、と怠惰な思いを抱いたのも事実だ。それどころかその大金を手にした人たちに嫉妬し、3000万近くのお金を自著の購入代に充てた人もいると聞くと、自分だったら小さな書店の本をすべて貪欲に買い占めるだろうと思ったりもする。だがここで殊勝なふりをしても仕方ないかと、恥ずかしくなった。本当のところ、多くは飲み食いに充てるに違いないと己の貪食さを思い浮かべる。とはいえしばらくするとまた別の思いがニョキニョキと沸きあがってくる。あまりに本心過ぎて抑えきれず今にも暴れ出しそうで、カミさん以外の助けを呼びたいほどだ。それほど強烈な感情、それは、若いお姉ちゃんと一緒にご飯でも、という邪淫な気持ちだった。
えーと、なにかあとひとつあったな、と指を折りながらブラビの顔を思い浮かべたが思い出せず、結局「このメモを見たのなら自分で考えろよ」と捨て台詞を吐く自分の傲慢さを披露してしまう。
ということで、投じられる人たちが、せめて院長のように罪深き人でないことを心から祈りながら、清き一票を投票箱に入れたのであった。