この定数反応という言葉、実のところこんな言葉があるのかどうか知らない。念のためネットで引いたが一件もヒットしないからきっとないのだろう。
ではなぜそんな言葉を題に用いたのか。ひとつはビールの勢いもあるが、それ以上にネタ元の記事に書かれていたという心強い根拠があるからだ。
そこでの表現は ’quorum response’ というものであった。
quorum というのは議会などの定足数を意味するらしく、response は反応だ。つまり定(足)数反応とでも訳すべき言葉になる。きっと世界初の訳だろう。世界初の間違いである可能性も大であるが、言葉の意味するところを紹介するとこんな具合になる。
たとえば交差点で信号待ちをしているとする。信号から注意をそらしたとき、群衆の中の誰かが歩道に向かってフェイントで一歩足を進めた。それに気づいてあわてて一歩を踏み出す人もいるだろう。
ところで”誰か”の人数はどれくらいだと人は動くのか。ひとりだろうか、あるいは二人だろうか。
定数反応とは、こうした”誰か”がある定(足)数になると起こる反応という意味のようで、今までゴキブリやアリやハチでは研究があったらしい。
今回オーストラリアの研究者はサカナを使って実験を行った。脊椎動物では初めての研究だという。
彼らはサカナロボットを作り本物のサカナが泳ぐ水槽のなかで泳がせた。
ロボットが一体のときはサカナはロボットを無視していたが、二体並べて泳がせるとサカナが従い付いてきたという。
現実の世界で二匹が一緒に泳ぐのは確率的な現象でしかないが、それでもそういうことが起こるとサカナはついていくということだ。
研究者らは人にはどのような定数反応があるのか、実際に交差点を利用して実験をやる予定だという。
ちなみに交差点で他人の動きにつられて歩き始めることは経験的に”誰か”がひとりでも十分ありえるし、またその場合でも赤信号に気づき止まるのが普通だ。歩きを止めない状態にもっていかないとここでいう”反応”の実験をする意味がないだろう。だから記事には述べられていないが、実験はサカナロボットに相当する何人かの”サクラ”を仕込み、かつ赤信号をなにかの障害物で偶然を装って一時的に隠して行われるものと推測される。
”サクラ”の人数を変え、かつつられて横断歩道を渡り切る人が出るようになるには何回も何回も繰り返しの実験が必要になるのは間違いないだろう。
だが研究者には申し訳ないが、定数反応を起こす人数は人類の歴史のなかですでに明らかになっているのだ。
私、回転寿司屋で、隣のおっさんが「中トロ」と注文したのを聞いて、思わず「中トロ」と言いそうになったが、値段を見て、あわてて「中イカ」と言い直した。「中イカ」ってなによ?
注イ力が足りなかったわけですね