「偶然」はどのようにあなたをつくるのか: すべてが影響し合う複雑なこの世界を生きることの意味」ブライアン・クラース (著)
まずはおめでとう。君にふさわしい内容の本だと思うので紹介したい。
大意はこんな具合だ。
原因と結果が結びつけば人は安心するし、それを学ぶことでほかの種と同様、人は進化してきた。とりわけニュートン力学が与えた因果律の影響は大きなものがある。しかし現代にあって人が考え出した因果律は間違っていることがあり、金融や政治をはじめ多くの領域で「安心のための物語」に過ぎないこともあるのだ。
一方で人の偶然という、一見するとあいまいさを漂わせる概念は、実は世界を構成するための確実な要因でもある。偶然は「ノイズ」ではなく、複雑に絡み合った必然の産物であることは歴史や社会のネットワーク、進化での突然変異など多くの例で確認できる。
つまり人生を「無意味」と捉えることは間違いで、偶然が生み出す影響の連鎖の中で、誰もが重要な役割を果たしているのだ。
おおよそそうした見解が述べられている。人生の立ち位置で迷っていたとき、大阪の英語学院に偶然に出会い、そして今までの生活に決別しそこで学び、海外で大学受験の資格を取った君にふさわしい示唆だと思うのだが、どうだろう。
とりわけ最後にまとめのように述べられてるボルネオ島の例が、また君のために書かれたように感じてしまう。
ふたたび大意を追うとこうだ。
ボルネオ島のある部族はゴムとコメの生産で生活の糧を得ている。環境はゴムの生産に適しており、その方法は企画化され、それを突き詰めることでゴムの生産性を増すことができる。一方痩せた土地でのコメの生産は、害虫や雨量などわずかな変動で大きく左右されるという。
ただこの部族は言い伝えられた習わしによって、コメを育てる土地を占いで選びなおしているのだ。
その結果、ほかの部族に比べコメの収穫が多くなっていたという。
あえて表現するなら、必然性と比較した偶然性の優位性とでもいうのだろうか。
なにより興味を引くのは、君が学ぶことになる大学があるボルネオ島の話という点だ。これもなにかの偶然なのだろう。
とにかく大学に行けば、という「安心のための物語」を捨て、「複雑に絡み合う必然の産物」を得ようと、あえて身を投じた君の勇気と決断には心底頭が下がる。
もちろん君が作ろうとするコメはうまく育たなかった、という結果になるかもしれない。だがそれでもいいと思う。
偶然が生み出す影響の連鎖の幅が大きく振れたことは間違いのだ。そのなかでまた君自身の輝きを放てばいい。
ということでサバ大学入学、本当におめでとう。
