4月から個人情報保護法が施行されるという。この法律、どうもよく分からない。というより、うさん臭さを感じてる。だけど、医療知識を持たない患者が院長にうさん臭さを感じても、どう指摘していいのか分からないのと同様、法律に詳しくないものとしては、うまく表現できない。
で、よく理解できないまま、医療の現場にも適応されるらしい、ということで、周囲がざわめき出した。
もちろん患者のプライバシーは守られねばならない。これは守秘義務として、法制化されていることだ。飲みごとのあと、どこへ行った か、なにをされても口を割らない院長としては、意外と得意な分野で、これまできっちり守ってきたつもりだ。
ただ意識的に秘密を守るだけじゃ済まなくなっている。
たとえば患者の呼び出しにマイクを使うことなども、個人情報の流出につながるというのだ。「日経メディカル」という医療雑誌の1月号の特集に載っていたことだから、院長のひとりよがりではない。
経済的視点から医療にアプローチするこの日経メディカルでは、「”配慮がない医療機関”とレッテルを貼られることにもなりかねんぞ」とまで注意を喚起してあるのだ。
たしかにそうかもしれない。ホテルのフロントで名前を呼ばれるとき、不快に感じることがある。もちろんバレてまずいことをやっているからだ。だとはいえ、もっとやましいことをしてるような気分にさせなくてもいいではないか。
こうした重々しい経験があるからだろう、こうした個人情報という点では、うちのクリニックは心配ない。
名前を呼ばないからだ。マイクはもちろんのこと、待合いにいる患者の名前を呼ばなくても、「診察室へどうぞ」という言葉だけで、通じる工夫がなされている。
その秘密はこうだ。待ち合いに患者がいるときは、いつも一人になるようにしてあるのだ。というか、どういうわけか、ほとんど待合いには患者はいつも一人なのだ。
もちろん、いつかは、二人、三人といわず、あふれんばかりの待合いにしたいのだが、その術は日経メディカルには書いてなかった。