仕分け人たち、とりわけそのなかのある人物にいいたい。個人批判が目的ではないので、仮にAさんとしよう。
官僚の無駄づかいをなくそうとする気持ちは大いに理解できる。だが少し熱がこもりすぎじゃないか。相手が話そうとしてもそれを押しやりマイクを取って畳みかけるように質問する。それでは庶民派ぶっても所詮は権力を笠に着る暴れん坊将軍ではないか。
それに早口なのは仕方ないとしてもヒステリックなしゃべりはいただけないぞ。Aさん、聞いてる?
だいたいもう少し現場を肌で感じて判断するべきじゃないのか。
ちょっとAさんにお話をしてあげよう。
人が発する音を理解するには相手が発する現場の空気に触れないとだめなのだ。米国の研究者が明らかにしたのだが、たとえば”p” 、”t”というような発音にはプッと息を吐き出す音が付いている。これがないと”p”が”b”に、”t” が”d”に聞こえてしまうのだ。
それを明らかにした実験はざっとこんな具合だ。
66人の被験者に目隠しして、まず”pa”と”ba”を次に”ta”と”da”をヘッドホーンから聞かせる。すると”pa”を”ba”に、またはその逆、あるいは”ta”を”da”にまたはその逆の聞き間違いが起こった。率としては30%から40%だ。ところが”pa”と”ta”がヘッドホンから流れるとき、被験者に分からないほどの弱い勢いの空気を肌に当てると正解率が10%から20%上がったというのだ。
これが現場の空気というものだ。現場の声を聞かなければ分からないこともあるということが少しでも理解してもらえただろうか。
え、最初のなんとか将軍って聞こえなかったって?あばれんぼう将軍っていったんだよ。
え、あはれんほうしょうくん、って聞こえたって。
仕方ないね。現場の空気を感じられないから、きっと濁音が聞こえないんだね。
そうそう、Aはれんほうしょうくん、あなたなんです。