写真の真ん中にいる男性はネタ元の研究をやった認知学の教授だ。記事の情報を頼りに探し当てた教授の自己紹介HPからのものを拝借している。ジョークの分かるような人のようで彼に直接訊けば教えてくれるかもしれないが、日本語が通じない可能性もあり困っている。
悩んでいるのは教授が使っている「小世界」という言葉の訳だ。
まず教授のやった研究からメモしてみたい。
教授が関心をもったのは、いろんな問題に対し最良の解決策を得るには、どのように集団を構成すればいいのか、を探ることだ。そのために被験者を親しさの度合いで3つのグループに分け、バーチャルの実験をやってみた。
被験者は1から100までの数字を頭に浮かべるよう指示される。それぞれの数字にはそれぞれ別の数字、いわば”裏”数字ともいうべきものが割り当てられているだが、それは被験者たちには教えられない。
被験者たちが選んだ”裏”数字を合計した数、ならびにそれぞれの被験者たちの思った数はグループの全員に明らかにされる。これを何回も繰り返して合計が高くなるようにグループで考えさせるというものだ。つまりみんなで”裏”と”表”の関係を考えろというわけだ。
”裏”数字と本当のいわば”表”数字の関係には簡単なものから複雑なものまである。記事には具体的には述べられていないが、一番簡単なものは、1は1、2は2という具合にそのまま対応させていくものだろう。またより複雑なものとしては、たとえば1を99に、2を98に、などのようにそれぞれを併せると100になるように対応させるという方法もあるだろう。
このような実験を行った結果、もっとも親しい人たちのグループは”裏”と”表”の関係が簡単なときはもっとも高得点を上げていたが、”問題”がむずかしくなるとより親しくないグループの方の成績がよかったことが判明した。
その理由について、より親しくないグループというのは多様性を持ち続けるため、よりよい解決の方策を見つけだすのに柔軟に対応できるのだという。
これは憶測だが、逆に言うとより親しいグループは”類は友を呼ぶ”的な発想に陥ってしまい、思考が硬直化するということなのだろう。
とにかくこんなことが述べられているのだが、気になるのはこのグループ分けの表現だ。
一番親しいグループを”お互い完全に影響を及ぼし合う家族のような『十分結びついた』関係”とし、次に親しい関係を”基本的には隣の人や近くの人がなにをしているかは知っているような『お隣さん』関係”、そして最後に”近所の人がなにをしているか知ってはいるが少し距離を置く『小世界』の関係”と分けているのだ。
家族のような関係は容易に想像できる。二番目のお隣さんも、昔なら醤油でも借りにいけるような関係ともいうべきものなのだろう。
問題は『小世界』だ。原文では small world と綴られていて、いわんとしていることは十分理解できるのだが、やはり『小世界』ではおかしいような気がする。
ということでどう訳せばいいのか、しばらく悩んでしまった。
”近所の人がなにをしているか知ってはいるが少し距離を置く関係”と『小世界』をどう結びつければいいのか。考えていると、ふとアイデアが浮かんできた。
逆に、距離を置かれた近所の人からなにかいわれたときのことを考えればいいのではないか。