実は数十年前にどこかで読んだことがあるのだが、読後に涙したとの書評を目にしたのでもう一度読んでみた。
作家、松下竜一さんの短編「絵本」だ。
「絵本」自体はアマゾンで探しても見当たらず、結局「教科書に載った小説」を取り寄せても読書となった。、
話の大きな軸をなすのは、時間を超えたサプライズだ。”ランボーの詩を暗唱し、バレリーを読破しようとしていた”ほどの優秀な友が病に伏す。そして死ぬ前に、まだ生まれてもいない松下竜一さんの子供へ向けて数年後に絵本を贈るよう企むのだ。
一言でいえば命に輝きがある、そうした表現を具体的にイメージできる物語だった。
ふと思い出すことがある。
高校生のとき、とても優秀な―その後、大学の教授になるほどのー同級生から教科書を貸してくれるよう頼まれたことがある。
それから1年後、その本の終わり近くの頁に彼の落書きがしてあることに気づいた。
”いまごろ気づいたのか”の文と一緒に借りた日付と本人の名前が記してあった。
なるほど賢い人は、時間を超えた発想をするものだなとあらためて感心する。
院長はといえば、ランボーの詩の暗唱もできないし、大学の教授でもないが、それでも懸命に想像しなければいけないことがあることに気づいている。
5年後、10年後の気候だ。そのとき、楽しい絵本を子供たちに読み聞かせることができるだろうか。
COP27が開催されている。