無限小

いかなる有限の量に対しても、それより小さな量が存在する
いかなる有限の量よりも小さな量が存在する

ふたつの文の違いが分かりますか、と「計算する生命」にあった読者への質問。

なるほどよく考えると、確かに異なる。
「院長は賢い」といわれてもどう賢いのか分からない。だがネコやサルより賢い、となると疑問が残るものの、ほぼ納得できる。
そもそも大小関係は比較のなかでしか表現できないはずだ。
たしかに日常的な言葉では「院長の心は限りなく小っちゃい」などといった文言は受け入れられる。でも数学的な言葉としては不十分なのだ、だぶん。

で、イプシロン-デルタ論法を思い出した。大学の数学授業で初めて出くわすやつ。無限に小さい間隙を想定するもので、なぜそんな七面倒くさいことをするのか、戸惑いを覚えた。
小さいものは小さいものでいいではないか、でもそれでは院長室のメモと一緒で、なにもいっていないことになるのだ、たぶん。
このイプシロン-デルタ論法も、きっとこのことをいっているんだな、と何十年ものわだかまりが溶けた気がする。

もっとも、いつもの勘違いで、将来、無限小ほども理解していなかったことに気づくかもしれないけど。