比喩

 図書館に行って本を物色していたら、「地球がもし100cmの球だったら」という60頁ほどの本があり、パラパラとめくってみる。各ページにイラストがある絵本のようなレイアウトで、かつすべての漢字にルビが打ってあり子供向けであるのは明らか。
100cmの球になぞらえて宇宙のなかの地球、地球の中のヒトを捉え直し、環境の問題、命の問題などを考えて欲しいという趣旨みたい。
 以前流行った「地球が100人の村だったら」を初め、この手のスケールを変えての物事の比喩というのは、ときどき見かける。でも、よほどインパクトのある表現が得られないと、あまり意味がないような気がするのね。
 たとえば「地球が100人の村だったら」のなかにある、「57人のアジア人、21人のヨーロッパ人、14人の南北アメリカ人、8人のアフリカ人がいます。
 52人が女性です。48人が男性です」なんてのは、単に比率をいってるだけだからね。


 いままでこうした比喩で記憶にあるのがいくつかある。その一つが、パソコンのハードディスクの針とディスクの回転の表現で、「ジャンボジェットが地上1mを飛んでいるようなもの」というもの。今は実際にこの例えのような関係にあるのかどうか知らないけど、いつも ハードディスクの話が出ると、ふとそのジャンボの姿が頭をよぎる。
 ほかにも有名なところでは、地球が誕生してからあと、いつごろ人類が登場したのかを言い表すもの。地球誕生からの50億年を一年のカレンダーに例えると、大晦日、夜12時の数秒前に人類は誕生したということになり、これも、ああ、人類って地球上の新参者なのねって実感できる。
「100cm…」の話にもそうした比喩がいくつか出てくる。空気の厚さは1mmしかなく、スペースシャトルが表面から2,3cmのところを飛んでいるとかは、子供でなくても興味を惹かれる表現だよね。
 で、そのうち一番記憶に残ったのが、海水の量のこと。
「海の平均の深さは0.3mmほどで、海水は全部で660cc」
 ここまでだったらそうインパクトのある表現じゃない。でもね、次に少し字を大きくしてこう書いてあるの。
「ビール大ビン一本分です」
 えーと、確かにボクはきっちり覚えました。毎日毎日、海を飲み干してるのを申し訳ないとも思います。
でもね、相手は子供なんだけど。わざわざビールを持ち出さなくてもよかったんじゃないかなぁ。ましてや大ビンも中ビンもよく分からないんじゃないんだろうか。
子供 「院長、大ビンは缶ジュースより大きいんですか」
院長 「そうだね。牛乳パックよりは小さいけどね」
子供 「缶ジュースより大きく牛乳パックより小さい中ビンなんですね」
院長 「いやいや、中ビンよりは大きいのが大ビンなんだよ」
子供 「じゃあ、中ビンより大きく牛乳パックより小さい中ビンが大ビンなんですね」
院長 「…まぁそうだけど」

ちなみに、代わるものがないかと、身近なものを探してみた。確かに、660ccに近い容器って見あたらないのね。ということで作者の方も仕方なく選んだのかもしれない。
うーん。でも、結局は、あまり必要のない比喩のような気がする。

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