生きていく上でつらいことばかりなのに、周囲のものは気づいてくれない。きっと自分の口元が原因だろう。心なしか唇の端が上に上がっているのだ。ビールを前にしたときの唇の角度とつらい毎日での角度との違いをだれも気づかない。
だがこのコンピューターならなんと評価するのだろうか。
イリノイ大学の研究者によって作られた”感情認識”コンピューターのことだ。お遊びとはいえ、あのモナリザの表情を読みとったという。
10人の女性の顔をもとに感情があいまいな顔の基準を作り、目の周りのしわや唇のゆがみなどで”幸福”、”驚き”、”怒り”、”嫌悪”、”恐れ”、”悲しみ”の六つの感情を点数化して人の顔が持つ感情を評価できるようにした。それを絵画のモナリザに適応してみたところ、幸福が8割、嫌悪が1割、残りが恐れと怒りの感情だったという。
たった10人の表情をもとにしていろんなことがいえるわけではないことも十分研究者は承知の上だ。それでも研究が進めばいろんなところで活用できるかも知れないと血気盛んだ。
すばらしい研究だと思う。確かに人の感情というのは一つではないのだ。つらくてビールを飲みたいときも、悲しくてビールをあおりたくなるときも、嬉しくてビールで乾杯したくなるときも、100%つらいわけでも100%悲しいわけでも100%嬉しいわけでもない。
今日はあまり飲めないだろうという恐れとか、悲しみとか、怒りとか少しは混じっているものだ。それを明らかにしようとする努力だけでもすばらしいと思う。
ただひとつ疑問がある。それぞれの感情が均一化された点数、たとえばこの研究では6つの感情で点数を用いたので100/6といった点数がそれぞれの感情で出たとき、その人はどういう感情をもっていると評価されるのだろう。
一体、幸せなのか怒っているのか、はたまた悲しんでいるのか分からないのではないだろうか。
研究者「そんなことはありません」
院長 「というと」
研究者「きっと”好き”という感情でしょう」
院長 「というと」
研究者「喜怒哀楽が均等に表現されている」
院長 「で?」
研究者「きっと I like」
「きっと I like」
いいな これ
どこかで使わせていただきます
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