残念なことに南京虫を見たことがない。いや見てもなんの虫か分からず、無視していただけかもしれない。
こんなことでは英国のシェフィールド大学の科学者チームから怒られるかもしれない。
彼らは15年も見続けているというのだ。
世界中の野外から鳥の巣から崖の上からと、サンプルを集めまくって何十ものナンキンムシ種のDNAを比較している。そして、従来、コウモリが南京虫の最初の宿主であると考えられていたのだが、南京虫はコウモリが出現するより前の1億年以上前に進化していたということが分かったという。
でも南京虫は、鳥の巣、フクロウの巣穴、コウモリのねぐら、人間の寝床など、「家」を持つ動物に寄生するのだが、コウモリの出現以前はどうやって暮らしていたのかまだ分からないらしい。
おもしろい点は、通常の寄生虫は、ヒトの進化に合わせてその寄生虫の新しい種への分化が引き起こされたのに、この南京虫は人間が登場する前からがんばっていたということで、この研究は南京虫がどういう形質を獲得して害虫になっていたたか、他の昆虫がどのようにして病気の媒介者になるか、それらが異なる宿主を選んで進化する方法などの理解の助けとなり、さらには昆虫を効果的に防除し、昆虫が媒介する病気の伝染を防ぐことになるのだ、とネタ元では語られている。
ノーベル賞を受賞した大村さんの研究もフィラリア寄生虫の研究だし、この研究から新しい分野へのカギがもたらされることになり、そしていつの日か、そのカギが創薬に結びつくかもしれない。
シェフィールド大学の科学者チームの先生、がんばってください。
ところで、ぜひ言っておきたいことがあるんですけど、いいですか?
そのカギで開かれたくすりの名前は、ずばり、南京錠 にしてください。
って、絶対怒られるな。