ゾウ

 二日酔いの朝、鏡に映る姿を見て魔法にかけられたような気分になることがある。目が腫れてまるで自分の顔ではないのだ。これじゃウチのアホ犬と同じで、なにも考えていないことがバレバレだ。診療どころではない。
 そう焦るのだが、よく考えると大きく違う点が一つあることに気づく。


アホ犬は前に鏡が置かれると鏡の後ろに回り込む。鏡に映る自分の姿を後ろにいるなにかと勘違いしているのだ。アホ犬の主人はいくら二日酔いとはいえそんな真似はしない。鏡に映る姿が自分であることを認識できているからだ。
 そういう芸当ができるのは人以外にはチンパンジーなどの類人猿やイルカなどごく限られた動物しか知られていなかった。
 ところがゾウも鏡の姿を自分だと認識できているのだという。
 米国の動物園で実験されたものだ。
 大きな鏡を三頭のアジアゾウに見せると三頭とも身体や鼻やしっぽを振りながら、鏡に映したり鏡から姿を消したりして、”いないいないバー”遊びを始めた。またエサを鏡の前に持ってきて自分が食べるのを見ていたりもしたのだ。

 さらに一頭の頭の一方に画像のような×の見えるマークをつけ、反対側に同じ臭いと感触の、見えないマークをつけてみたところ、見えないマークは無視し、見える×ばかりを一生懸命鏡に映し鼻で触っていたという。(下のリンクにあるビデオ参照。上の画像にある鏡越しの映像)
 ネタ元の内容はざっとこんな具合だ。
 ”いないいないバー”遊びは少し説得力にかけるような気がするが、マークをつける実験は分かりやすい。なるほど自分を認識しているようにも見える。
 だがゾウの行動を説明するほかの可能性はないのだろうか。たとえばマークに見える、見えないの差をつけてはいるものの、見えるマークがゾウしか感じられないなにかを発していて、それがある種の催眠状態を誘発し、まるで魔法にかかったような行動を取らせている可能性はないのだろうか。
 印が置かれた位置を見ていると、こうした漠然とした疑問が湧いてくるのだ。
スタッフ「なにをいいたいのですか」
院長  「印の位置がこめかみの辺り、つまりビンなのが気になる」
スタッフ「だから?」
院長  「象印、魔法ビンの可能性はないだろうか」
スタッフ「アホ犬と一緒に後ろに回り込んでください」

参照ビデオ
ネタ元
Elephants recognise themselves in mirror

Elephants see themselves in the mirror