旅行に出ると、必ず旅先の書店に出向く。このご時世、どこで書物を求めても同じなのはわかっているが、旅の思い出として気に入った本があれば購入している。
そんなことで数日前に手にいれたのが、「日本の最終講義」。教鞭にたづさわっておられた先生方の最終講義をまとめたものだ。
そのなかで数学者の遠山啓さんの講義に興味を引く個所があった。
「群とは、何かの構造をゆさぶってみる一つの手数もしくは、操作の集まりと考えてよいと思います。そうすることによってその構造自身を解明してゆく手がかりになるわけです」
揺さぶり方で、しっかりした根は動かないが、「幹は少し動く、枝はもっと動く、葉ははげしく動く」ということで対象の構造をあきらかにできるというのだ。
群論のアイデアを提起したガロアの理論は昔から興味があって、なんどかチャレンジしてみたが、いずれも途中で挫折していた。そうか群論というのはそんなツールだったんだ。
その視点でまた学び返せば、一歩さらに進むことができるかもしれない。
そんな淡い期待とほのかな決意をいただかせる内容だった。
とはいえ、わたしの好奇心をふたたびゆさぶることはできても、またもや、ポキンと折れるかもしれない不安は残る。