磁気

　磁石には不思議な力がある。ある種の金属を引き寄せたり方角を示したりする。頭に植え込んでさえいたら人生のコンパスを見誤らなかったかもしれない。
　この神秘的な力を背景に巷には磁気を使った商品があふれている。そのほとﾇの効能は肩こりや痛みが取れるというものだ。だが本当なのだろうか。頭に植え込んでさえいたら、今までの心の痛みは取れたのだろうか。
　そう悩んでいたとき、出会った記事があった。磁気は痛みを取らないというデータが米国の病院から出されたのだ。

　靴のソールに磁気入りのものを入れて足の痛みが取れるかどうかを調べてみた。磁気入りじゃないのに磁気が入っていると伝えた場合と比較するとなにも差はなかったというものだ。
　世界中で磁気商品は５０００億円もの市場を形成しており、米国内でも５００億円に達しているというのに、なんの根拠もなく放置されているとはなげかわしい、ってなかんじのことがネタ元で述べられている。
　つまり良くなったという患者は磁気を使わなくてもよくなったということだ。
　でもそれはそれでいいことだろう。
　この際だからこの手の健康グッズに対する診療のスタンスをメモしておこう。
　磁気や電気に限らず健康食品などでも体の調子よくなったという患者がいるとする。かつその器具なり食品なりが健康を害することはないだろうと推測できるとしよう。
　そのときは、その効能がかなりあやふやであっても、患者の意向を否定しないということだ。
　要は患者の状態が良くなることだ。むしろよかったと一緒に喜ぶことにしている。
　ただし微妙な問題も含んでいるのも事実だ。もし実際には濃厚な手当が必要なほかの患者にもその効能を勧め、結果としてその患者の治療が遅れることもあるからだ。だからあまりその効用を強調しすぎる患者には、やはりそれとなく意見することもある。
患者「磁気で健康になります」
院長「よかったですね」
患者「ほかの人にも勧めます」
院長「待ってください」
患者「どうしてですか」
院長「ジキに健康になります…病気じゃなければ」

ネタ元
Magnetic insoles do not provide pain relief, Mayo Clinic study reports