病名

 マルタ病という病気があった。過去形で書いたのは、地中海のマルタ島の人たちが反対して、病名を変えたからなのね。この病気、細菌で起こるんだけど、確かに、名前だけ聞くとマルタ島に広がる風土病として誤解されるかもしれない。
 そんなこんなの詳しい経緯がここの記事にある。


 なんでも Bruceって人が、マルタ島で死亡した軍人の脾臓に微生物を見つけ、それをマルタ菌となずけたことに騒動の原因があるらしい。
 とはいえ、あまり聞き慣れない病名であるのも確か。一度もこの患者を診たことがない院長なんか、患者を前にして、さてなんの病気じゃろかいな、コマルタ、コマルタ、と頭をひねること、間違いなしの病気だ。
 で、このマルタ病が取りやめになったあと、なんという病名になったかというと、ブルセラ症。下着ショップのおやじがこの病気になると、ブルセラ商のブルセラ症?、とやはり頭をひねること、間違いなしの病気には変わりない。
 実はこうした病名の変更というのは、ちょくちょく行われている。たとえばパーキンソン病などという病名は、以前はパーキンソン氏病と”氏”がついていた。もうめんどうだからやめようね、というので、”氏”が取れたわけ。
 それとかある種の偏見を持たせるかも知れないとのことで、最近、分裂病が統合失調症になったし、患者を不安にさせるかもということで、これもつい最近、慢性関節リュウマチの”慢性”がなくなり、関節リュウマチになった、とか。
院長  「名医にとってはとても都合のいいことだね」
スタッフ「というと」
院長  「たとえば慢性関節
リュウマチの見立てが違っていたとする」
スタッフ「それで」
院長  「患者から文句をつけられる。ほかの病院で診てもらったら、『慢性関節リュウマチじゃなかった』ってね」
スタッフ「それで」
院長  「あ、いまはそんな病名じゃないんですよって、反論できるでしょ」
スタッフ「なるほど。院長の場合は微妙名をつけてるんですね」
院長  「そうそう」

…ってナわけはありません。たぶん。

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