指の長さ

　”白魚のような指”という表現がある。”カモシカのような足”という表現もある。
　いわんとしてることは分かるけど、明らかに間違っている。白魚とカモシカの足を想像してみるとすぐに分かることだ。白魚のような指が仮にあったとしたら、少なくとも誉め言葉じゃないし、カモシカのような足を持った人がいれば、遺伝学者がすぐに飛んでくるだろう。
　”白魚のように透き通って細い指”であり、”カモシカのようにたくましい足”が正解だ。

　じゃあ、”伸び盛りの小娘のような指”というのはどんな指なのだろうか。いろいろな想像があるだろう。
　自分の娘を思いだした方もいるかもしれない。カウンターの向こうの娘の指を思い出す方は、院長と同類だ。
　いずれにしても、やさしいという要素があるに違いない。
　だが、事実は違う。その意味するところは、攻撃的な指、ということだ。ただしご婦人には関係なく、男性だけの話だ。
　うちには回覧板が回って来なかったけど、この百年の間科学者は、指の長さの比率が男と女では違うということに気づいていた。それだけではない。彼らは指の長さと胎児のときにさらされる男性ホルモンの量の間にも関連があることも知っていた。
　どういうことかというと、人差し指と薬指の長さを比べたとき、薬指の方が長いほど、胎児のときにより多くの男性ホルモンにさらされているのだ。
　そこまでは分かってたけど、研究は、どうも放って置かれたみたいだ。でもある学者が今までの研究を押し進めることができないか、腰を上げた。院長室の古本を捨てるときと一緒だ。目を通してもない医学雑誌がごまんとある。でも、なにかないかとページをめくってると、ときに忘れていたヘソクリを見つけるときがあるのだ。だからダメもとだと、やってみる。
　で、学者さん、もう一度、胎児のときの男性ホルモンの量と性格というのに関連がないか、３００人を対象に研究し直してみた。
　最初は、自分自身も馬鹿げていると思いながらやったそうだ。だけど、結果が出て驚いてしまった。
　その気持ちはよく分かる。古本のなかにお札が出てきたときの驚きと一緒だ。　
　そこで明らかになったのは、人差し指と薬指の長さを比べたとき、薬指が長いほど、”攻撃的”な要素がある、ということだった。
　もちろん、この”攻撃的”というのは注意を要するものだ。男性ホルモンを胎児のときにたくさん浴びれば、みんな攻撃的になるもんじゃない。そうしたことを初め、ネタ元にはいろいろ書いてあるけど、まぁ”攻撃的”な要素の一つになってるかも、ってぐらいにとらえればいいんじゃないかと。
　研究自体は、カツオのダシ汁から、またダシを取ってるようなカンジもするけど、それはさておき、やはり自分の指を見てしまう。
　決して自分は、攻撃的な性格じゃないと思ってる。で、自分の人差し指と薬指の長さはを比べるとあまり変わらないから、やはりこの研究結果は信じるべきなのだろうか。
　でも男性ホルモンということからすると、性格の問題より、男性のイチモツの大きさに影響を与えるような気もするんだけど。
　つまり薬指が人差し指に比べて長い人ほど、男性ホルモンがたくさん出てるわけだから、薬指の長い人のイチモツは、より男性ホルモンの影響を受けているということじゃなかろうか。そこからは、ある結論が導かれるような気がする。
　そう考えながら改めて自分の指を見ると、なんとなく薬指が長く見えてきた。

ところで最初にメモした”伸び盛りの小娘のような指”という意味を理解して頂けただろうか。
お姉さん指がお母さん指より長くなると、攻撃的になるという意味だ。
だからなんだといわれても、お父さん指は困ってしまうのだが。
ネタ元
Finger Length Predicts Aggression in Men　02 March 2005