天花粉

 あまり患者さんのことはメモしないようにしているんだけど、これは許してもらえると思うので。
 今日その患者さんが喉が痛いといってこられたのね。お年は五十をゆうに過ぎた方。結局、扁桃腺が腫れてたんだけど、診察の際に胸に白い粉がついているのに気づいたわけ。ベビーパウダー、昔風でいう天花粉ってヤツなんだけど、それがまばらに胸元に付いているのね。


 で、話を聞くとアセモができやすく、一夏に五缶も使い切るそうな。えー、そんなに塗りたくるんだなぁとか最初驚いてしまってたんだけど、ふと思いが違う方に流れていってしまって。
 そういえばお風呂上がりとか、兄姉でつけ合ったりしたなぁ、でもあれっていつまで付けてたんだろう。確か小さいときしか使わなかったよなぁ。
 ひょっとしてこの患者さんはご幼少のときの習慣をそのまんま続けておられるのかしらってね。
 予告編でしか見てないけど、「呪怨」(じゅおん)ってホラー映画のお化けなんかも体中に白いの塗りたくってるよなぁ。志村けんの”ばか殿”のようにはっきり方向性が出ているような白さには安心感があるけど、ぱっと見、なんだろうと思わせるような白い塗りたくりは不気味なモノにつながるのかしらね。
 で、ふと思ったんだけど、豪華客船のヘサキでひとり白い化粧して手を広げてる女性を見たら、やっぱり不気味と思うだろうなぁ。
 女性の名前が セリーヌ、じゅおん さんだったらなおさらだよね。

新しい月が始まったというのにまたまたくだらんまとまりのないメモになってしまって。ここで二つばかり解説を。
セリーヌ、ディオンさんは「タイタニック」のテーマを歌い上げた人ってのが一つ。もう一つはこの患者さん、実は院長の数少ない兄姉の一人でありまして。あえて性別はメモしなかったけど、その兄妹が、ちっちゃいときからの習慣を今もなお続けていることに深く感銘してのメモでした。

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