レセプト算定日

医療業界にレセプトというものがある。保険診療の枠内で患者に対して行った行為を一つのデータにまとめたものだ。それをしかるべき箇所に送れば現金化される、いわば請求書だ。
それならレセプトをデッチ上げれば医療人はウハウハではないか、と誰もが思うだろう。だがそれは違う。ドラエモンがなぜ”どこでもお財布”を四次元ポケットから出さないのかを考えると答えは自ずと明らかになるだろう。その行為は倫理に反するのだ。当然のことながら、やったことだけをきちんと記録することが大前提なのだ。ドラエモンがそのお財布を出すときっとマンガ界から追放されるのと同じように、そこでインチキをやってしまう医療者は、この業界からほぼ永久追放になってしまう。
ということで医療人はまじめにレセプトを作成しているわけだが、お上の指示で来年4月からこのレセプトに大きな変更が加わることになった。医療行為をやった日付けをデータにつけなさいというのだ。


治療を料理に例えればこんな具合だ。
人参を何本、タマネギを何個、ネギを何把、何グラムの肉を使い、燃料費はいかほどでした。だからこの料理の値段をいかほどです。治療も一緒で治療に要した薬代、医療材料、技術料などを請求するのだ。いままではそれでよかったのだが、来年4月から料理の仕方を問われることになるということだ。
でもちょっと違和感を感じる。
たとえばある料理のレシピによればお湯が煮立ったときに肉を入れることになっていたとししょう。その準備をしていたときに玄関のチャイムがなった。仕方なく玄関に出ている間にそのタイミングを逃してしまった、なんてことは日常的にありえることではないだろうか。
だが新しい変更ではそうしたことは許されないことになるかもしれない。タマネギの入れるタイミングが違うのでその分は請求されてもお支払いしませんよ、ってな具合に跳ね返される可能性があるのだ。たとえば、ちょっと予定があっていつもと早くに薬をもらいに来ました、などという患者の都合など無視されることになるかもしれず、結局そうした患者の要望はそれぞれの医療機関から敬遠されてしまうことにもなりかねないのだ。
ひょっとしてお上は医療側や患者側が萎縮してしまう医療、そんなことを望んでいるのではないだろうか。真意がどこにあるのか、よくは分からない。だが、ドラエモンのスモールライトを変なところに当てると、ストーリーがいびつなものになるのは容易に想像できる。

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