プリオン

医学生が行う解剖実習のご遺体にプリオン蛋白質が見つかったという長崎大学の報告があった。
プリオンは狂牛病の原因とされるもので、蛋白質なのに生き物のように自分を増やしていく不思議なものだ。

実はプリオンはもともと体内に存在するものだが、この病気を引き起こす蛋白質はそのプリオンをより強固にしたものになっている。長崎大学の報告にもあるようにこの”プリオンは一般的な滅菌法では不活化されず、ホルマリンにも抵抗性”を持つのだ。

その頑丈なプリオンが体内に入ると、正常なプリオンにまとわりつき、変形させ同じ異常プリオンへと変化させ、それらが脳に蓄積すると狂牛病などの脳の機能を犯す病気となる。少ない知識だが、おおよそこの説明で合っているだろう。

ほかにも羊がかかるスクレーピー病などの原因とされているのだが、実態はまだまだ解明されていない。
そもそも狂牛病が発見されたのが、1990年代で、その前にあったのかどうかさえ分かっていない状況なのだ。

ひょっとして大きな脳を持つ脊椎動物は、脳を発達させる前にもともと異常プリオンを持っていたのではないか。その脳を高次化させるため逆に異常プリオンを追い出すことで、脳としての進化を遂げてきたのではないか。

そして追い出されていた異常プリオンは再び、追い出された体内へ忍び込もうとしている。

日経サイエンス8月号に案内されていた「第10回星新一賞、応募始まる」を見て、ぼんやりそんな空想をしてみた。