トランス脂肪酸のメモをしたのは6年前。今読んでいる「禍の科学」(ポール・オフィット著)にもトランス脂肪酸が出てきたので、その内容を交えて再度メモしてみる。
このトランス脂肪酸、2004年に厳しく制限したデンマークでは2010年に心臓病の発症率と関連死が60%低下したというぐらい、健康に悪影響を与える物質だ。
脂肪(酸)は以下のように分類される。
ひとつは一杯いっぱいつながっているもので飽和脂肪酸という。(H:水素 C:炭素)
H H H H H
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ーCーC-CーCーCー
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H H H H H
一方下のように満たされてない構造の脂肪酸があり、不飽和脂肪酸という。
H H H H H
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ーCーC-CーCーCー
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H H H
不飽和脂肪酸には上と下の二つのタイプがあり、上のようにHが横並びになっているのをシス不飽和脂肪酸、下のタイプのようにHが横切っているのをトランス不飽和脂肪酸(トランス脂肪酸)という。
H H H H
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ーCーC-CーCーCー
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H H H H
部分水素添加油脂という技術でこのトランス脂肪酸が作られ、安価で安定性もいいなどの理由で作られた油脂はマーガリンやクッキーやチキンやパイやクラッカーなどなどにどんどん使われていった、というようなことが述べてあるのだが、ふと疑問に思ったことがある。
たったひとつの水素の移動がなぜそれほどまでに人体に影響するのだろう。
そういえば、昔、サリドマイドという胎児の催奇性を引き起こしたくすりがあり、その化学構造は鏡面対象のふたつのもので構成されていて、そのひとつのみに催奇性がある、ということだったはずだ。
よく見るとトランス脂肪酸も対称性をもった構造になっている。
自然は人工的に作られた対称性を嫌うのだろうか。
とくかくトランス脂肪酸とはあまりお付き合いしない方がいいことは間違いない。