ガム

 患者さんのことはメモしないように心がけているんだけど、ちょっと知り合いのお父上であり、守秘義務にも反しないだろうと思うのでありまして。


 朝から雨が降り、患者さんの出足もボツリボツリとヒマのなか、くだんのお父上が来られた。完全におしっこしが出せない方で、毎回超音波を下腹に当て、おしっこがどの程度残っているのか診ている。お年をめした方だけど、その年代にしてはけっこうおしゃれな方だと、いつも感心している。今日はそれだけでなくガムを噛んでおられたので、なんとなくダンディ度アップって感心していたわけで。
 で、今日も診察台に寝てもらって超音波を当てた。残っている量はいつもと変わらず、結論からいうと問題はなかったんだけど、なにか影が見えたので、普段より長めに診ていた。
 で、患者さんからこう訊かれた。
「多いでしょ?」
 もちろん気にされているのは、残っているおしっこの量のこと。
 でもなにをトチ狂ったか、ボクは「いいえ、ヒマです」と答えてしまったのね。当然お父上はキョトンとした顔をされた。すぐに気づき、残っている量はいつもと変わらないことを説明したんだけど、気まずかったこと、しきりでして。
 なぜあのとき「多いでしょ?」の前に、勝手に「患者さんは」の言葉を連想してしまったのだろう。
 知り合いのお父上ということもあって、気がゆるんでいたのもあるのだろうなぁ。その方が横になりながらもクチュクチュと噛んでおられたガムに注意がいったのも事実。
 まさに、注意 in ガム。
ってなこといってみても、なんだかねぇ。

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