カットオフ値

 血液の検査に、基準値というのがある。健康な人のほとんどがそのなかに入る値の範囲で、それから出ているからといってすぐに病気というわけじゃない。逆に基準のなかに入ってるからまったく健康というわけでもないないのね。
 検査結果を示すときは、必ずこのことを患者さんに説明してる。で、その境界を示す値をカットオフ値というんだけど。
 そもそもある検査の値が病的かとうかというのは、確率的に言い表していて、「病気であることを診断する確率」と、「病気でないことを診断する確率」の両方を考えなくてはならないのね。
検査として最高にいいのは、どちらとも100%のもの。つまりその検査で異常だと出れば、病気、そうでなければ全く安心していいですよってもの。ちょっど白と黒にきっちり色分けされた豆腐をその境界線でスパッ切るようなもの。だけど、実際にはなかなかそんなものはなく、現実の確率というのは、その境界のあたりの色が徐々に変わっていってるようなものなの。


 だから「病気であることを正しく診断する確率」を大きくすると、「病気でないことを正しく診断する確率」が小さくなり、逆もまたそうで、つまりは一方が大きくなれば、一方は小さくなるって関係にあるわけ。
 そういう条件のもとにあるお互いの確率を高くする値が、実際にはカットオフ値として選ばれてるのね。
院長 「カットオフ値から少し出てますけど…」
患者 「じゃあ病気じゃないんですね」
院長 「いや、あるいは病気かもしれないけど…」
患者 「けど?」
院長 「病気じゃないかもしれないし…」
患者 「どちらなんですか」
院長 「うーん」
患者 「ヘボ医者にとっては、カットウ値なんですね」
院長 「うーん…悩ましい」

以前、スタッフに、このメモのように豆腐を例えにカットオフ値を説明をしたら、「だからカットとおふ値なんですね」と了解を頂いたことがありました。

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