骨のある奴も、魚の小骨が嫌いな奴もみんな持っている骨の数は一緒だ。体にある200個ちょいのその骨たちは体の形を作り上げている。
だがそれだけではない。ほかにも骨は血液を作るなどの仕事をしている。
まぁ世の中そんなこともあるだろう。院長がメモをするだけでなく医療行為をしているのと同じだ。
だが骨がホルモンを作っているとするとどうだろう。この業界にあまり関心のない人は驚かないかもしれないが、これはとてもびっくりするようなことなのだ。院長が実はサルだったというのと同じぐらいびっくらこいてもいいほどの話だ。
コロンビア大学の研究者らが骨から出るオステオカルシンというホルモンを見つけ、さらにこのホルモンはインスリンの分泌を高め、かつインスリンを利用しやすくする作用を有するということを明らかにしたのだ。
ご存じの方も多いだろうが、インスリンは血液中の糖を細胞のなかに入れる作用を持つ。血糖は食事をすると高くなる。インスリンはそれを細胞のなかに入れて血糖を低くするのだ。
ビールを胃のなかに入れる作業を毎日している院長よりりっぱな仕事をしているというわけだ。
でもインスリンと血糖のバランスがうまくいっているときはいいが、食事が多すぎるとインスリンの量が間に合わなくなってくる。つまり血糖が高い状態が続くのだ。その状態はやがて糖尿病という病態を生み出す。
とはいえインスリンの働きを高めるオステオカルシンが作用すればどうだろう。たくさん食べてもインスリンがちゃんと出てかつきちんと作用し血糖を正常化できるのだ。
ということで糖尿病治療薬として注目を集めているオステオカルシンということらしいが、ひとつ不安がある。
食事の摂りすぎで起こる糖尿病の治療は、まずもって食事療法なのだ。それを前提に治療がうまくいかないときに、こうした薬を使うのが常識だ。
それを理解できてない人がこの薬を使うことで食事が乱れるということはないだろうか。どんな食生活をしてもオステオカルシンがなんとかしてくれるだろう、というわけだ。
そうした考えはばかばかしいものだ。睡眠を取れば、お酒をたくさん飲んでも翌日はなんとか仕事ができるだろうとの院長の考えが、いかに浅はかなのかを見ればお分かりだろう。
でもそういう人は必ず出てくる。毎朝反省しながらもその夜にはビールを口にする医者がいるのと同様だ。
極端な話、食べ物の骨にそのホルモンが残っていると勘違いし、飲んでは骨を食べ、食べては骨を口にするというような人も出てくるかもしれないのだ。
だからこの種の薬が登場したときのために、忠告を準備しておく必要がある。
そのスローガンはこうだ。