今日は恥を二つ告白したい。
暗いところから急に日の当たる場所に出ると、クシャミがでる人がいるらしい。ネタ元の記事によればおそよ3人に1人がそうしたことを経験しているという。
ということで、まず第一の恥。医療に従事しながらもそんなことはまったく知らなかった。
でもカミさんに聞いてもそんなことはないという。離乳食を口にし始めた子供たちに聞いてもなにも答えない。3人に1人はいるはずなのにそのウラは取れなかったわけだ。これはうさん臭い話か、と思いながら読んでいるととんでもない。かのアリストテレスもこの現象に考えを巡らしていたというのだ。
太陽の熱が鼻に刺激を与えているのではないか、というのがアリストテレスの推論だった。ほんとうにそうなのか、確かめる必要があったのだが、ご存じのようにその後ヨーロッパはうちのクリニックの経営と同様、暗黒時代に突入する。
それが再吟味されたの2000年後のことだ。
英国の哲学者ベーコンがルネッサンスの息吹のなかアリストテレスの主張を確かめる実験をやってみた。17世紀のことである。とても複雑な実験で普段意識しない眼の回りの筋肉に意識を集中し、上の眼瞼を下に、下の眼瞼を上に来るようにしながら太陽を見つめるというものだ。
でも複雑だと感じたのはどうやら未だ暗黒時代にいるクリニックの院長だけのようだ。やってみると簡単なことだ。要するに眼を閉じて太陽を見たのだ。
するとどうだろう。閉じた瞼の奥は熱くなるもののクシャミは出ないではないか。
だとするとアリストテレスは間違っている、そう考えたベーコンは新たな仮説を立てた。
日光が眼に潤いをもたらしているのではないか。その水分が眼から鼻へと通じる管を通じて流れ、鼻の辺りをくすぐりクシャミを起こしているのではないか、と。
実は今までこの現象についての科学論文はほとんどないらしい。かろじて報告されたものによれば視神経が鼻のあたりの感覚を司る三叉神経の近くを通っているのがこの現象を引き起こしているのではないかということが推測されている。
そういう意味ではベーコンの眼に生じた刺激が鼻に伝わっているというのは、かなりおおざっぱではあるとはいえ、当たらずとも遠からずであるわけだ。
ざっとこんなカンジの内容がネタ元で述べられているのだが、そろそろ第二の恥についてメモするときがきたようだ。
眼の水分というベーコンの考えを紹介したネタ元のくだりに humour という単語があったのだ。ご存じの通り、humour とは日本語にもある”ユーモア”のことである。
当然、どこにユーモアがあるのかと探してみた。だがよく解らない。いくら英語力が弱いといっても何度見てもどこにもそれらしきユーモアの節が見あたらないのだ。
ひょっとすると前提が間違っているのではないか。そう考えもう一度 humour の意味を調べ直すと、なんと”眼の液体”との意味があったのだ。つまり日光の刺激で出てきた眼の潤いが鼻に伝わるということをいいたかったようなのだ。
ああ、そうだったのか。
医者なら知っていて当たり前のことなのかもしれない。いや、きっとそうなのだろう。いくら暗黒時代に住んでいるとはいえ、そんな医学英語を知らないとは恥ずかしい限りだ。
ということで、これだけ恥をさらしたのだからひとつ仮説を提案させてもらいたい。
なぜ、日の光をみるとクシャミが出るのか?考えたのだが、やはりベーコンの説がくさい、とにらんでいる。
どう見ても、ベーコンは”くさめ”ではないか。
ここまで目を通してしまった自分を情けなく思い、もし目に涙を浮かべている人がいれば、十分 humour が伝わっているに違いない。
(Wikipedia)ベーコンとは、豚肉を塩漬けして燻煙にしたもの。
(徒然草)”道すがら、「くさめくさめ」と言ひもて行きければ…”
ネタ元
Looking at the Sun Can Trigger a Sneeze