自動ドア

最近睡眠気味で疲れがとれない。カミさんにいうと年のせいだろうと、つれなく返してくる。昼休みに少しでも横になることができればありがたいのだが、カミさんのぜひとの頼みとあらばがんばるしかない。今日の昼休み、近くの大型ショッピングセンターまでアッシーくんを演じたのだ。


子供たちも一緒の買い物で、かといってインフルエンザから一歩でも遠ざかるために、子供たちとおやじは館内に入らずクルマのなかで待機する。外は雨だ。童謡のCDをかけていていたが、お山に雨がふりまして、やがていたずらクマの子が必ずやってくるように、子供らの退屈はやってきた。そこらを散歩というわけにもいかず、クルマから出て建物の大きなひさしの下でカミさんを待つことに。
そこに両開きの大きな自動ドアがあった。手持ちぶさたに馬鹿おやじがそれとなく近づきながら「開け」とドアに向かって声をかけるとドアが開く。そしてしばらく待ってから「閉まれ」というとドアは閉まる。その姿を脳裏に刻み込んでからというもの子供たちにとって、ドアの前は絶好の遊び場と化した。
ドアが二人を関知して動いているのを知ってか知らずか、両足を広げ体を斜めにして片手を前につきだしながら、あるときはじりじりドアに迫り、あるときは間合いを広げながら、「閉まれ」「開け」を、力の限りの大声で叫び続ける。あるときは姿勢を低くしあるときは走り回りながら、顔を赤らめ息が切れるまで語尾をのばして、ドアに命令を繰り返すのだ。
突き出でた建物の入り口には三面に自動ドアがあり、二人の姿におそれをなした買い物客を、別の二つの自動ドアへと追いやるほど、彼らの力はこもっていたのだった。
なるほど、思い通りにものを動かせれば、それはそれは楽しいことだろう。カミさんの気持ちがよく理解できる昼休みとなった。

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